裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
昭和27(あ)6363
- 事件名
麻薬取締法違反
- 裁判年月日
昭和29年7月16日
- 法廷名
最高裁判所第二小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
破棄差戻
- 判例集等巻・号・頁
刑集 第8巻7号1151頁
- 原審裁判所名
東京高等裁判所
- 原審事件番号
- 原審裁判年月日
昭和27年5月30日
- 判示事項
一 麻薬取扱者の麻薬の不正取扱と旧麻薬取締法第一四条第一項の帳簿記入義務
二 不正に入手した麻薬の処理と麻薬取扱者の記帳義務違反罪の成否 ―期待可能性の有無―
- 裁判要旨
一 旧麻薬取締法(昭和二三年法律第一二三号、昭和二八年法律第一四号により廃止)第一四条第一項の帳簿記入義務は、麻薬取締者が正規の手続を経ていない麻薬を取り扱つた場合でも、これを免れ得ないものと解するのが相当である。
二 原判決は、正規の手続を経ていない麻薬の取扱に関する事実を帳簿に記入することは、その違反行為の発覚の端諸となるものであつて、麻薬取扱者といえどもこれを期待することが不可能であるから、かかる事実を帳簿に記入しなくても、当該義務違反の罪を構成しない旨判示する。しかし麻薬取扱法者たることを自ら申請して免許された者は、そのことによつて当然麻薬取扱法規による厳重な監査を受け、その命ずる一切の制限または義務に服することを受諾しているものというべきである。されば、麻薬取扱者として麻薬を処理した以上、たとえその麻薬が取締法規に触れるものであつても、これを記帳せしめられることを避けることはできないのみならず、取締上の要請からいつても、かかる場合記帳の義務がないと解すべき理由は認められない。また麻薬取扱者はかかる場合、別に麻薬処理の点につき取締法規違反により処罰されるからといつて、その記帳義務違反の罪の成立を認める妨げとなるものではないことはいうまでもない。
- 参照法条
旧麻薬取締法14条1項
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