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最高裁判所判例集

事件番号

 平成4(オ)200

事件名

 損害賠償

裁判年月日

 平成7年6月9日

法廷名

 最高裁判所第二小法廷

裁判種別

 判決

結果

 破棄差戻

判例集等巻・号・頁

 民集 第49巻6号1499頁

原審裁判所名

 大阪高等裁判所

原審事件番号

 昭和63(ネ)1898

原審裁判年月日

 平成3年9月24日

判示事項

 一 診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準
二 昭和四九年一二月に出生した未熟児が未熟児網膜症にり患した場合につきその診療に当たった医療機関に当時の医療水準を前提とした注意義務違反があるとはいえないとした原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨

 一 新規の治療法の存在を前提にして検査・診断・治療等に当たることが診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準であるかどうかを決するについては、当該医療機関の性格、その所在する地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮すべきであり、右治療法に関する知見が当該医療機関と類似の特性を備えた医療機関に相当程度普及しており、当該医療機関において右知見を有することを期待することが相当と認められる場合には、特段の事情がない限り、右知見は当該医療機関にとっての医療水準であるというべきである。
二 昭和四九年一二月に出生した未熟児が未熟児網膜症にり患した場合につき、その診療に当たった甲病院においては、昭和四八年一〇月ころから、光凝固法の存在を知っていた小児科医が中心になって、未熟児網膜症の発見と治療を意識して小児科と眼科とが連携する体制をとり、小児科医が患児の全身状態から眼科検診に耐え得ると判断した時期に眼科医に依頼して眼底検査を行い、その結果未熟児網膜症の発生が疑われる場合には、光凝固法を実施することのできる乙病院に転医をさせることにしていたなど判示の事実関係の下において、甲病院の医療機関としての性格、右未熟児が診療を受けた当時の甲病院の所在する県及びその周辺の各種医療機関における光凝固法に関する知見の普及の程度等の諸般の事情について十分に検討することなく、光凝固法の治療基準について一応の統一的な指針が得られたのが厚生省研究班の報告が医学雑誌に掲載された昭和五〇年八月以降であるということのみから、甲病院に当時の医療水準を前提とした注意義務違反があるとはいえないとした原審の判断には、診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準についての解釈適用を誤った違法がある。

参照法条

 民法415条,民法709条

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