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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和50(あ)787

事件名

 騒擾附和随行、騒擾助勢、騒擾指揮、騒擾首魁、外国人登録法違反、放火未遂、暴力行為等処罰に関する法律違反、外国人登録令違反

裁判年月日

 昭和53年9月4日

法廷名

 最高裁判所第二小法廷

裁判種別

 決定

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 刑集 第32巻6号1077頁

原審裁判所名

 名古屋高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和50年3月27日

判示事項

 一 騒擾罪の成立に必要な共同意思の要件
二 騒擾罪の成立に必要な共同意思が認められるとされた事例
三 騒擾の率先助勢の成立要件
四 騒擾の率先助勢が成立するとされた事例
五 憲法三七条一項の迅速な裁判の保障条項に反する異常な事態が生じていないものとされた事例

裁判要旨

 一 騒擾罪の成立に必要な共同意思が存するといいうるためには、騒擾行為に加担する意思において確定的であることを要するが、多数の合同力による暴行脅迫の事態の発生については、常に必ずしも確定的な認識をまで要するものではなく、その予見をもつて足りる。
二 デモ隊員中の多数の者が抱いていた警官隊との衝突の予想が、漠然とした抽象的なものではなく、具体的で高度の可能性をもつものであり、積極的、攻撃的に警官隊に対して暴行を加えるかも知れないという予想とみられうる本件においては(判文参照)、警官隊との衝突を予想し、これを認容してデモ行進に参加した者についても、騒擾罪の成立に必要な共同意思を認めることができる。
三 騒擾の率先助勢とは、多衆の合同力を恃んで自ら暴行又は脅迫をなし、もしくは多衆をしてなさしめる意思をもつて、多衆にぬきんでて騒擾を容易ならしめ、その勢を助長、増大する行為をいい、それが現場で行われると事前に行われるとを問わず、また、その行為のときにすでに多衆が集合して共合して暴行又は脅迫を行うべく共同意思を形成していることを必要としない。
四 騒擾開始前に、講演会終了後デモが行われデモ隊の一部が警官隊に暴行するかも知れないと予測し、講演会場に行く途中の者に対し、同人らに右デモ隊と共同して暴行させる意思をもつて、判示のような指示激励をしたうえ、プラカードの竹槍二本を二名に交付し、よつて一二名ないし一三名を騒擾に参加させた行為は、騒擾の率先助勢にあたる。
五 被告人らに対する審理が、第一審において約一六年ないし一七年三か月、控訴審において約五年四か月を要し、今日では最初の起訴から約二六年もの長期間が経過しているとしても、右審理長期化の原因が、事案の複雑困難、証拠の厖大、被告人の多数ということのほかに、被告人らにおいて執拗ないわゆる法廷闘争を展開したことにもあると認められる本件においては(判文参照)、いまだ憲法三七条一項に定める迅速な裁判の保障条項に反する異常な事態に立ち至つたものとはいえない。

参照法条

 刑法106条,憲法37条1項,刑訴1条

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