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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和36(あ)2764

事件名

 虚偽有印公文書作成、同行使補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律違反

裁判年月日

 昭和41年2月3日

法廷名

 最高裁判所第一小法廷

裁判種別

 決定

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 集刑 第158号235頁

原審裁判所名

 広島高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和36年10月27日

判示事項

 刑罰法令不遡及の原則、罪刑法定主義、不告不理の原則に違反しないとされた事例。

裁判要旨

 原判決の認定によれば、山口県においては昭和三〇年度に整備農薬管理事業を実施する意思もなく、又実際これを実施していなかつたにもかかわらず、被告人Aはこれを実施するものとして農林省に不実の申告をして国庫補助金を偽りの手段により山口県に交付を受けることを相被告人B及び同Cと共謀したものである以上、その共謀は刑法第二四六条の詐欺の共謀に外ならず、何ら刑罰法規に触れるものではないということはできない。かかる共謀に基づき同県の右農薬に関する事務を掌る相被告人両名において、右補助金交付申請手続を原判示の如く実際に行つたものであつて、その実行行為の時には既に補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下適正化法と略称する)が実施されていた関係上、検察官はこれを適正化法第二九条第一項違反として起訴し、第一、二審裁判所も同条項違反として処断したものであることは、本件記録に徴して明らかである。即ち、本件は被告人三名が偽りの手段により国庫補助金の交付を受けようという詐欺の共謀をなし、その共謀に基づきそのうちの二名がその後右目的達成のため必要な行為を実行し所期の目的を達したものであるが、犯人側の為した行為自体は同一であり、相手方のこれに対応する態度の如何を構成要件の中に包含する罪と、これを構成要件としない罪とがある場合、検察官は立証の有無、難易等の点を考慮し、或は訴因を前者とし或はこれを後者の罪として起訴することあるべく、本件については後者の起訴をしたまでであり、かくて第一、二審裁判所も当該訴因について審判したものであるにすぎない。右の如く、被告人Aが相被告人両名と共謀した日時が適正化法施行前であつたとしても、その共謀自体詐欺罪の共謀であり刑罰法規に触れるものである以上、その後適正化法が施行されるに至つた関係上、検察官において右共謀に基づく所期の目的達成のためになされた行為を適正化法第二九条第一項違反として起訴したためその訴因について審判が行われ、かくて原判決が被告人Aの所為についても実行行為者である相被告人らと同様適正化法の右条項の範囲において刑責を認めたからといつて、所論の如く刑罰法令不遡及の原則、罪刑法定主義に違反し、不告不理の原則を犯すものということはできない。

参照法条

 憲法31条,刑法246条,補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律29条1項

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