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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和36(あ)465

事件名

 放火、重過失致死

裁判年月日

 昭和37年3月1日

法廷名

 最高裁判所第一小法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 集刑 第141号377頁

原審裁判所名

 大阪高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和35年11月11日

判示事項

 重過失致死罪の成立を認めた事例。―放火後の注意義務

裁判要旨

 原判決の是認した第一審判決は、(註。被告人は材料置場に置いてある油に放火するときは、A方及びその附近の家屋に延焼し、同家屋居住者の生命身体に危害を及ぼすに至る虞のあることは少し注意すれば容易に予見できたのに拘らず……憤激の余り漫然所携のマツチで右油槽内のシンナ、白灯油等に放火した。)被告人は燃えている物に蒲団、砂をかける等臨機の措置をとつて火勢が拡大し被害が他に及ばないよう沈着適切な行動をとるとともに、当時二階に寝ていたBに対し可及的速かに火災の急を告げて同女を屋外に避難させ、或いは他人に救助を頼む等あらゆる方法をこうじ、もつてBの救助に最善の努力を傾ける注意義務があつた旨を判示している。そして被告人の右注意義務は、原判示の是認した第一審判決の確定した事実関係の下においては、一般通常人の注意を払うことにより、よく罪となるべき事実を認識しうべき程度の注意義務と解するを相当とし、また、その注意義務を果すことが期待不可能であつたとは認められない。しからば、被告人が右の注意を怠り、よつてBを死に致した被告人の本件行為を過失犯をもつて問擬したことは正当である。

参照法条

 刑法38条1項,刑法110条1項,刑法211条後段

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