裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
昭和37(あ)937
- 事件名
関税法違反
- 裁判年月日
昭和41年5月18日
- 法廷名
最高裁判所大法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
その他
- 判例集等巻・号・頁
集刑 第159号733頁
- 原審裁判所名
大阪高等裁判所
- 原審事件番号
- 原審裁判年月日
昭和37年2月8日
- 判示事項
関税法(昭和二九年法律第六一号による改正前)第八三条第一項により没収した貨物の共有者に告知、弁解、防禦の機会を与えなかつたことと憲法第三一条第二九条。
- 裁判要旨
原判決の認定するところによれば、「右時計の密輸入はA公司の事業にかかり、同公司は会社としては未登記であるが、資本金は千万円であつて、その本店は香港にあり、社長はB、C支店長にD、同副支店長に被告人E、経理係に被告人F、同支店顧問にGが夫々就任し、被告人Eも百五十万円、同Fも七十万円、Gは百八十万円出資している」とされ、記録によれば起訴のなかつたDも、明示的には共犯者とされていない公訴外Bも出資者であることが窺われる。
右の事実関係によれば、原判決が没収の言渡をなした右時計七〇〇個は、被告人Eを始めとするA公司の出資者全員の共有に属するものと認むべきところ、原審はその没収をするに当り公訴外共有者に対し、何ら告知、弁解、防禦の機会を与えていないことが記録により明らかであり、右没収処分が憲法第三一条、第二九条に違反して許されないことは、当裁判所大法廷判例(昭和三〇年(あ)第九九五号同三七年一一月二八日判決、刑集一六巻一一号一五七七頁)の示すとおりである。従つて原判決は、この点において破棄を免れない。
(裁判官田中二郎の意見)
多数意見のように、A公司が法人格を有しないからといつて、直ちに、本件時計七〇〇個が同公司の出資者全員の共有に属するものと解するのは論理の飛躍であり、また、かりに右時計がA公司の出資者全員の共同所有に属することを否定し得ないとしても、その共同所有の法的形態をどう理解すべきかについては疑問の余地があるのであつて、それは、多数意見の認めるような共有ではなく、むしろいわゆる合有の一種とみるべきものと解する。そして、本件没収処分をなすに当つては、同公司のわが国における代表者に告知、弁解、防禦の機会を与えることを要し、かつ、これをもつて足りると解すべきである。(昭和三八年(あ)第二三三号同四〇年四月二八日大法廷判決、刑集一九巻三号三〇〇頁参照)従つて、原判決には、本件没収の要件事実について、審理不尽の違法があることに帰し、原判決は、この点において破棄を免れない。
- 参照法条
関税法(昭和29年法律61号による改正前)83条1項,憲法31条,憲法29条
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