裁判例検索

裁判例結果詳細

最高裁判所判例集

事件番号

 昭和46(あ)1658

事件名

 業務上過失傷害

裁判年月日

 昭和47年4月7日

法廷名

 最高裁判所第二小法廷

裁判種別

 判決

結果

 破棄差戻

判例集等巻・号・頁

 集刑 第184号15頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和46年6月30日

判示事項

 一 右折車両の運転者の対向直進車両に対する注意義務(距離が七〇メートル以上もある場合)
二 右折車両が対向車線上に約一メートル進出したことをもつて過失にあたるものと解されないとされた事例

裁判要旨

 一 車両が、幅員約一〇・一メートルの車道を進行して交差点に進入し、幅員約一七メートルの交差道路へ右折のため一時停止している場合、対向直進車との距離がなお七〇メートル以上もあるときは、対向車が異常な高速を出している等の特別な事情がないかぎり、右折車の運転者は、対向車の運転者が交差点進入にあたり前方を注視し法規に従つて速度を調節する等正常な運転をすることを期待しうるのであり、その場合右折車が対向車の到達前に右折し終わることは通常容易なことと認められるから、仮に被告人が同様の判断をもつて右折を開始したとしても、これをただちに軽率な行為として非難し、対向車との安全確認を怠つたものと断定することはできないものといわなければならない。
二 被告人は右折開始後道路中央線より約一メートル対向車線上に自車を進出させたときA車が約二四・九メートルの距離に迫つたのを認めて停止し、その際被告人車の右方(北方)の道路部分にはなお幅員四メートル以上の余裕があり、他に何らの障害物もなく、交差点に進入する時のA車の速度は時速五〇キロメートルであつたとすれば、被告人車が約一メートル中央線を越えたとしても、Aにおいて、急制動の措置をとるなり、僅かに左転把をしさえすれば、容易に衝突を回避できたはずであり、被告人としてもAがそのような適切な措置を講ずるであろうことを期待しうる状況にあつたというべきであるから、被告人が自車を対向車線上に約1メートル進出させたことをもつて本件事故の原因となる過失にあたるものと解するのは相当でない。

参照法条

 刑法211条前段,道路交通法37条

全文