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最高裁判所判例集

事件番号

 平成7(オ)2030

事件名

 賃金請求事件

裁判年月日

 平成12年3月9日

法廷名

 最高裁判所第一小法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 集民 第197号75頁

原審裁判所名

 福岡高等裁判所

原審事件番号

 平成1(ネ)193

原審裁判年月日

 平成7年4月20日

判示事項

 一 労働者が始業時刻前及び終業時刻後の事業場の入退場門と更衣所等との間の移動に要した時間が労働基準法上の労働時間に該当しないとされた事例
二 労働者が終業時刻後の洗身等に要した時間が労働基準法上の労働時間に該当しないとされた事例
三 労働者が休憩時間中の作業服及び保護具等の一部の着脱等に要した時間が労働基準法上の労働時間に該当しないとされた事例

裁判要旨

 一 労働者が、就業規則により、始業に間に合うよう更衣等を完了して作業場に到着し、終業後に更衣等を行うものとされ、また、使用者から、実作業に当たり、作業服及び保護具等の装着を義務付けられ、右装着を事業所内の所定の更衣所等において行うものとされていた造船所において、始業時刻前に入退場門から事業所内に入って更衣所等まで移動し、終業時刻後に更衣所等から右入退場門まで移動して事業所外に退出した場合、右各移動は、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができず、労働者が右各移動に要した時間は、労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間に該当しない。
二 労働者が、就業規則により、始業に間に合うよう更衣等を完了して作業場に到着し、終業後に更衣等を行うものとされ、また、使用者から、実作業に当たり、作業服及び保護具等の装着を義務付けられていた造船所において、終業時刻後に手洗い、洗面、洗身、入浴を行い、洗身、入浴後に通勤服を着用した場合、右労働者が、使用者から、実作業の終了後に事業所内の施設において洗身等を行うことを義務付けられてはおらず、特に洗身等をしなければ通勤が著しく困難であるとまではいえなかったという事実関係の下においては、右洗身等は、これに引き続いてされた通勤服の着用を含めて、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができず、労働者が右洗身等に要した時間は、労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間に該当しない。
三 労働者が、就業規則により、始業に間に合うよう更衣等を完了して作業場に到着し、所定の始業時刻に作業場において実作業を開始し、午前の終業については所定の終業時刻に実作業を中止し、午後の始業に間に合うよう作業場に到着し、所定の終業時刻に実作業を終了し、終業後に更衣等を行うものとされ、また、使用者から、実作業に当たり、作業服及び保護具等の装着を義務付けられていた造船所において、午前の終業時刻後に作業場等から食堂等まで移動し、現場控所等において作業服及び保護具等の一部を脱離するなどし、午後の始業時刻前に食堂等から作業場等まで移動し、脱離した作業服及び保護具等を再び装着した場合、労働者が休憩時間中の右各行為に要した時間は、労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間に該当しない。

参照法条

 労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)32条

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