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最高裁判所判例集

事件番号

 平成7(オ)48

事件名

 預託金返還等

裁判年月日

 平成9年10月14日

法廷名

 最高裁判所第三小法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 集民 第185号361頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

 平成5(ネ)3236

原審裁判年月日

 平成6年9月26日

判示事項

 一 ゴルフ場建設工事中に締結されたゴルフクラブ入会契約における開場すべき債務の履行期が工事の遅延に関して予想される合理的な期間が経過した時という不確定期限であるとされた事例
二 ゴルフ場建設工事中に締結されたゴルフクラブ入会契約における開場すべき債務の履行につき不確定期限が到来していないとされた事例
三 ゴルフ場建設工事中に締結されたゴルフクラブ入会契約においてゴルフ場経営会社にゴルフ場の高低差等のコースレイアウトに関する債務の不完全履行があるとはいえないとされた例

裁判要旨

 一 ゴルフクラブ入会契約がゴルフ場の建設工事中である昭和六二年五月に締結されたが、右契約に基づくゴルフ場施設を利用可能な状態にした上これを会員の利用に供すべき債務の履行期を記載した契約証書が作成されておらず、募集パンフレットには完成同六三年秋予定という記載があったにすぎず、右契約当時においては平成元年に開場することが予定されていたなど判示の事実関係の下においては、右債務の履行期は、工事の進ちょく状況及び社会経済状況に照らして、右開場予定時期から工事の遅延に関して予想される合理的な期間が経過した時という不確定期限とみるべきである。
二 ゴルフ場の建設工事中である昭和六二年五月に締結されたゴルフクラブ入会契約に基づくゴルフ場施設を利用可能な状態にした上これを会員の利用に供すべき債務の履行期が、開場予定時期である平成元年から工事の遅延に関して予想される合理的な期間が経過した時という不確定期限である場合において、調整池予定地の買収ができなかったことなどが原因で工事が遅延したが、その後の努力により工事が進ちょくし、右契約を解除する旨の意思表示がされた同四年二月一日には、既に視察プレーの名目の下における営業が開始され、近々債務の本旨に従った履行がされることがほぼ確実に見込まれていたなど判示の事実関係の下においては、右意思表示の時点において右債務の履行期が到来していたとはいえない。
三 ゴルフ場の建設工事中にゴルフクラブ入会契約が締結されたが、コースレイアウトについて図面等に基づく詳細な合意がされたものではなく、募集パンフレットには、高低差一〇メートル以内のフラットなコースとする旨の記載があるが、他方、一五メートルの高低差のあるホールの断面図も記載されており、また、当初の予定は調整池予定地の買収ができなかったことなどが原因で変更されたものの、ゴルフ場完成時においては全一八ホール中過半数のホールが高低差二〇メートル未満であったなど判示の事実関係の下においては、ゴルフ場経営会社に、コースレイアウトについてできるだけ高低差が少なく全体としてフラットといい得るコースを作るという債務の不完全履行があるとはいえない。

参照法条

 民法第3編第2章契約,民法412条2項,民法415条

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