裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
昭和24(れ)2718
- 事件名
業務上横領等
- 裁判年月日
昭和26年6月12日
- 法廷名
最高裁判所第三小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
棄却
- 判例集等巻・号・頁
集刑 第47号797頁
- 原審裁判所名
大阪高等裁判所
- 原審事件番号
- 原審裁判年月日
昭和24年9月5日
- 判示事項
一 期待可能性がないとの主張が犯意不存在の主張に過ぎない場合
二 代替物の受託保管と横領罪の成立
三 会社がその業務に関係なく受託保管した物を保管する右会社の物資保管担当者の不法領得行為と業務上横領罪の成立
- 裁判要旨
一 論旨は、当時の事情の下においては、被告人等三名は本件特殊物件は取引と同時に払下を受けたものであると信ずるに足る十分な理由があつたのであり、被告人に本件特殊物件の取引保管についての真実の認識を期待することは不可能であつて、原判決は各被告人等の期待可能性のない行為を罪とした違法があると主張しているが、右は畢竟、本論旨中の被告人等三名に横領の犯意がなかつたものであるとの主張と同一に帰する。
二 本件特殊物件は「孰れも将来省から払下を受ける迄は自由に処分出来るものではなく、省発注品の資材として使用するについても、一応大鉄局の許可を得なければならぬものであつた」のであるから、たとえ右引取物件が代替物であつてAが他に同種の鋼材を手持していたとしても、なお省の所有に属する右引取物件を受託者において受託の趣旨に反して勝手に使用または売却した所為は、横領罪を構成するものであることは当然である。
三 被告人Bの本件特殊物件の保管が、同被告人の業務(Aの生産部長事務取扱として同会社の所要資材の調査出納保管の事務を担当す)に属するものであることは、田辺弁護人論旨第四点において説明したとおりである。そしてまた、Aが運輸省のために右特殊物件を保管したことが、Aの業務に属するものでないとしても、被告人Bの右物件の横領行為に対しては業務上横領罪が成立する。
- 参照法条
刑法38条1項,刑法253条
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