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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和23(れ)351

事件名

 強盗、窃盗

裁判年月日

 昭和23年7月20日

法廷名

 最高裁判所第三小法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 刑集 第2巻8号979頁

原審裁判所名

 大阪高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和22年6月23日

判示事項

 一 見張りと窃盜の共同正犯
二 財物奪取の意思連絡による行爲の分擔と強盜の共同正犯
三 共謀の事實についての判示の程度
四 見張りと強盜の共同正犯
五 脅迫されて犯行現場の近くに立つていたとの主張と刑訴第三六〇条第二項
六 共謀の日時場所の判示の要否
七 共同正犯に對し刑法第六〇條の適用を判文に明示することの當否

裁判要旨

 一 窃盜の共犯者と意思連絡のもとに見張をした場合は窃盜の共同正犯と斷ずべきものである。
二 他人の財物を奪取する意思連絡の下にその目的を達するために、或者は財物の奪取行爲を擔當し、他の者は被害者に暴行又は脅迫を加えた場合に、その全員について強盜罪の共同正犯が成立することは多く論ずるまでもないことである。
三 論旨は何日何處で誰々との間に如何なる通謀をしたかの事實理由を判決に明示しなければならないというのであるが、共謀の日時場所は必ずしも判決に明示する必要はなく誰々の間に本件犯行の共謀があつたかは判文自體より明らかであり且第一審相被告人等と被告人との間に主從關係があるとか、對等關係でないとかの事實は、原審では認めないのであるからことさらに對等關係で共謀した旨を説示しなくとも所論の如き違法はない。
四 原判決舉示の證據により、被告人と第一審相被告人との間に本件犯行について意思連絡があり、しかも相被告人等と被告人の間に主從關係とか、不平等關係があつたということは原審で認めないのであるから所論の如き主犯とかの區別は認められないのである。被告人は直接財物窃盜行爲をなさずただ見張をしただけであるから幇助罪として斷ずべきものだと主張するのであるが、原審においては本件共犯者間には強盜についての意思連絡ありと認定したものであり、強盜についての意思連絡の下に見張をしたものは共同正犯として處罰し得べきことは大審院判例の示すところであつて、今これを改める必要なしとの見解に基き強盜の見張をした被告人を強盜の共同正犯と斷じたことを窺い知ることができるのであるから、所論の如き刑法第六〇條の解釋を誤つたものではない。
五 強盗犯人から、犯行を共にするよう誘われ、これを拒んだところ、匕首で脅迫されたので、やむを得ず犯行の現場近くで立つていたとの主張は、刑訴法第三六〇条第二項の「法律上犯罪の成立を阻却すべき原由たる事実上の主張」にあたらない。
六 数人共謀して犯罪を犯した場合に、共謀をした日時場所は、必ずしも判示する必要はない。
七 原判決において刑法第六〇條を適用した旨を判文上明示しなかつたことは所論の通りである。しかし原判決は第一審相被告人等と被告人とは本件犯行について共謀したものと認定し、且其共謀に基いて被告人は見張をした事實を認定したのであり。意思連絡のもとに強盜の見張をしたのであるから、本件犯行の共同正犯であると断じたものである從つて刑法第六〇條を適用した旨を判文上明示しなくとも、同條を適用した趣旨であることはおのづから明白であるから、所論の如き違法はない。

参照法条

 刑法356条,刑法60条,刑法236条,刑訴法360条1項,刑訴法360条2項

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