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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和23(れ)555

事件名

 強盗、殺人未遂

裁判年月日

 昭和23年9月18日

法廷名

 最高裁判所第二小法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 集刑 第4号111頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和23年1月29日

判示事項

 一 殺人未遂罪と不能犯
二 憲法第三七條第一項にいわゆる「公平な裁判所の裁判」
三 證據に採用しない書類の作成手續上の違法と上告理由

裁判要旨

 一 刑法第四三條にいわゆる「犯罪の實行に着手し之を遂げざるもの」とは、その行爲を以て犯人の豫見する結果を惹起することができる實行行爲に着手し、その犯罪を遂げなかつた場合を意味し、その實行行爲を以ては絶對に犯人の豫見する結果を惹起することができない場合には、同條の未遂罪を以て論ずることができないことは所論の通りであるが、原判決の認定するところによれば、被告人等は共謀して自動車運轉手を殺害して自動車を強奪しようと企て、所携のバンドを自動車運轉手Aの頸部に掛けて締め付けたが、偶々該バンドが切れた爲めに殺害の目的を遂げなかつたと云うのであり、しかして右バンドが紙製擬革品であつても、右の方法を以つてすれば絶對に人を殺害することができないものではなく、殺害の結果を惹起する危險は十分あつたのであるが、偶々、右バンドが切れたために殺害の目的を遂げることができなかつたと云うに過ぎない。また、犯罪の時刻及び場所が殺人を行うに不適當であつたからと云つて、殺害の結果が發生しないと云うことができないことも自明のことである。したがつて本件殺人未遂の點は、所論のように、いわゆる不能犯にはあたらない。
二 憲法第三七條第一項にいわゆる「公平な裁判所の裁判」とは偏頗や不公平のおおれのない組織と構成とをもつた裁判所による裁判を意味するのであつて、原審の事實の認定又は刑の量定を被告人から見て不當であるとしても、右憲法の條項に違反しないものであることは、既に當裁判所の判例とするところである。(昭和二二年(れ)四八號二三年五月二六日判決。昭和二三年(れ)一七一號、二三年五月五日判決)
三 所論の實況見分書は原判決の證據として採用しないものであつて、從つて假にその作成手續上に違反があつたとしても、この違法は原判決に影響がないこと明白であるから上告理由とならない。

参照法条

 刑法199條,刑法43條,憲法37條1項,刑訴法411條

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