裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
平成20(受)1704
- 事件名
地位確認請求事件
- 裁判年月日
平成22年7月12日
- 法廷名
最高裁判所第二小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
棄却
- 判例集等巻・号・頁
民集 第64巻5号1333頁
- 原審裁判所名
東京高等裁判所
- 原審事件番号
平成19(ネ)3596
- 原審裁判年月日
平成20年6月26日
- 判示事項
1 株式会社の新設分割において,会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平成17年法律第87号による改正前のもの)3条によれば分割をする会社との労働契約が分割によって設立される会社に承継されるものとされている労働者が,当該承継の効力を争うことができる場合
2 株式会社の新設分割において,会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平成17年法律第87号による改正前のもの)3条によれば分割をする会社との労働契約が分割によって設立される会社に承継されるものとされている労働者につき,当該承継の効力が生じないとはいえないとされた事例
- 裁判要旨
1 株式会社の新設分割において,会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平成17年法律第87号による改正前のもの)3条によれば分割をする会社との労働契約が分割によって設立される会社に承継されるものとされている労働者と,当該分割をする会社との間で,商法等の一部を改正する法律(平成12年法律第90号。平成17年法律第87号による改正前のもの)附則5条1項に基づく労働契約の承継に関する協議が全く行われなかった場合,又は,上記協議が行われたものの,その際の当該会社からの説明や協議の内容が著しく不十分であるため法が上記協議を求めた趣旨に反することが明らかな場合には,当該労働者は当該承継の効力を争うことができる。
2 株式会社の新設分割において,会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平成17年法律第87号による改正前のもの)3条によれば分割をする会社との労働契約が分割によって設立される会社に承継されるものとされている労働者と,当該分割をする会社との間で行われた,商法等の一部を改正する法律(平成12年法律第90号。平成17年法律第87号による改正前のもの)附則5条1項に基づく労働契約の承継に関する協議は,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,上記協議の際の当該会社からの説明や協議の内容が著しく不十分であるため法が上記協議を求めた趣旨に反することが明らかであるとはいえず,当該労働者につき当該承継の効力が生じないということはできない。
(1)当該分割をする会社は,労働者の代表者への説明に用いた資料等を使って労働者への説明や承継に納得しない労働者に対しての最低3回の協議を行った。
(2)当該分割をする会社は,当該労働者を代理する労働組合との間で,7回にわたる協議を行うとともに書面のやり取りも行うなどし,分割後に当該労働者が勤務する会社の概要や当該労働者が承継される営業に主として従事する者に該当することを説明したものであり,その説明が不十分であったがために当該労働者が適切に意向等を述べることができなかったような事情もうかがわれない。
(3)当該分割をする会社が,分割によって設立される会社の経営見通しなどにつき当該労働者が求めた形での回答に応じなかったのは,上記会社の将来の経営判断に係る事情等であるからであり,在籍出向等の要求に応じなかったのは,合弁事業実施の一環として行われた当該分割の分割計画ではこの目的を前提に従業員の労働契約を上記会社に承継させることとされていたからであって,いずれも相応の理由があった。
- 参照法条
(1,2につき)会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平17年法律第87号による改正前のもの)2条1項,会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平17年法律第87号による改正前のもの)3条,商法等の一部を改正する法律(平成12年法律第90号。平成17年法律第87号による改正前のもの)附則5条1項,分割会社及び承継会社等が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置の適切な実施を図るための指針(平成12年労働省告示第127号。平成18年厚生労働省告示第343号による改正前のもの)
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