裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
平成22(行ツ)54
- 事件名
再雇用拒否処分取消等請求事件
- 裁判年月日
平成23年5月30日
- 法廷名
最高裁判所第二小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
棄却
- 判例集等巻・号・頁
民集 第65巻4号1780頁
- 原審裁判所名
東京高等裁判所
- 原審事件番号
平成21(行コ)62
- 原審裁判年月日
平成21年10月15日
- 判示事項
公立高等学校の校長が教諭に対し卒業式における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し国歌を斉唱することを命じた職務命令が憲法19条に違反しないとされた事例
- 裁判要旨
公立高等学校の校長が教諭に対し卒業式における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し国歌を斉唱することを命じた職務命令は,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,当該教諭の思想及び良心の自由を侵すものとして憲法19条に違反するということはできない。
(1) 上記の起立斉唱行為は,学校の儀式的行事における慣例上の儀礼的な所作としての性質を有するものであり,「日の丸」や「君が代」が戦前の軍国主義等との関係で一定の役割を果たしたとする当該教諭の歴史観ないし世界観を否定することと不可分に結び付くものではなく,上記職務命令は,その歴史観ないし世界観それ自体を否定するものとはいえない。
(2) 上記の起立斉唱行為は,学校の儀式的行事における慣例上の儀礼的な所作として外部からも認識されるものであって,特定の思想又はこれに反する思想の表明として外部から認識されるものと評価することは困難であり,上記職務命令は,当該教諭に特定の思想を持つことを強制したり,これに反する思想を持つことを禁止したりするものではなく,特定の思想の有無について告白することを強要するものともいえない。
(3) 上記の起立斉唱行為は,国旗及び国歌に対する敬意の表明の要素を含む行為であり,上記(1)の歴史観ないし世界観を有する者がこれを求められることはその歴史観ないし世界観に由来する行動と異なる外部的行為を求められることとなる面があるところ,他方,上記職務命令は,高等学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿い,かつ,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえた上で,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに当該式典の円滑な進行を図るものである。
(補足意見がある。)
- 参照法条
憲法15条2項,憲法19条,地方公務員法30条,地方公務員法32条,学校教育法(平成19年法律第96号による改正前のもの)18条2号,学校教育法(平成19年法律第96号による改正前のもの)28条3項,学校教育法(平成19年法律第96号による改正前のもの)36条1号,学校教育法(平成19年法律第96号による改正前のもの)42条1号,学校教育法(平成19年法律第96号による改正前のもの)51条,国旗及び国歌に関する法律1条1項,国旗及び国歌に関する法律2条1項,高等学校学習指導要領(平成11年文部省告示第58号。平成21年文部科学省告示第38号による特例の適用前のもの)第4章第2C(1),高等学校学習指導要領(平成11年文部省告示第58号。平成21年文部科学省告示第38号による特例の適用前のもの)第4章第3の3
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