裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
平成21(受)1905
- 事件名
損害賠償請求事件
- 裁判年月日
平成23年7月15日
- 法廷名
最高裁判所第二小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
その他
- 判例集等巻・号・頁
民集 第65巻5号2362頁
- 原審裁判所名
広島高等裁判所
- 原審事件番号
平成20(ネ)454
- 原審裁判年月日
平成21年7月2日
- 判示事項
弁護士であるテレビ番組の出演者において特定の刑事事件の弁護団の弁護活動が懲戒事由に当たるとして上記弁護団を構成する弁護士らについて懲戒請求をするよう視聴者に呼び掛けた行為が,不法行為法上違法とはいえないとされた事例
- 裁判要旨
弁護士であるテレビ番組の出演者において,特定の刑事事件の弁護団の弁護活動が懲戒事由に当たるとして,上記弁護団を構成する弁護士らについて懲戒請求をするよう視聴者に呼び掛けた行為は,次の(1)〜(5)など判示の事情の下においては,上記弁護士らについて多数の懲戒請求がされたとしても,これによって上記弁護士らの被った精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度を超えるとまではいえず,不法行為法上違法なものであるということはできない。
(1) 上記行為は,娯楽性の高いテレビのトーク番組における出演者同士のやり取りの中でされた表現行為の一環といえる。
(2) 上記行為の趣旨とするところは,懲戒請求は広く何人にも認められるとされていることなどを踏まえ,視聴者においても上記弁護活動が許せないと思うのであれば懲戒請求をしてもらいたいとして,視聴者自身の判断に基づく行動を促すものであり,その態様も,視聴者の主体的な判断を妨げて懲戒請求をさせ,強引に懲戒処分を勝ち取るという運動を唱導するようなものとはいえない。
(3) 上記弁護士らは,社会の耳目を集める刑事事件の弁護人であって,その弁護活動の当否につき国民による様々な批判を受けることはやむを得ないものといえる。
(4) 上記懲戒請求が多数されたについては,多くの視聴者等が上記出演者の発言に共感したことや,上記出演者の関与なくしてインターネット上のウェブサイトに掲載された書式を使用して容易に懲戒請求をすることができたことが大きく寄与している。
(5) 上記懲戒請求は,ほぼ同一の事実を懲戒事由とするもので,弁護士会の綱紀委員会による事案の調査も一括して行われ,上記弁護士らもこれに一括して反論をすることができ,同弁護士会の懲戒委員会における事案の審査は行われなかった。
(補足意見がある。)
- 参照法条
民法709条,弁護士法58条1項
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