裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
平成22(受)1584
- 事件名
立替金請求事件
- 裁判年月日
平成23年11月17日
- 法廷名
最高裁判所第一小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
棄却
- 判例集等巻・号・頁
集民 第238号115頁
- 原審裁判所名
大阪高等裁判所
- 原審事件番号
平成21(ネ)1005
- 原審裁判年月日
平成22年5月14日
- 判示事項
公有地に係る土地信託契約において,受益者に対する費用補償請求権を定めた旧信託法(平成18年法律第109号による改正前のもの)36条2項本文の適用を排除する旨の合意が成立していたとはいえないとされた事例
- 裁判要旨
県と信託銀行との間で,県を委託者兼受益者,信託銀行を受託者として,県がその所有する土地を信託銀行に信託譲渡し,信託銀行が建設資金等を借り入れた上で同土地上にスポーツ・レクリエーション施設を建設し,これを管理運営することを目的とする土地信託契約が締結された場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,上記信託契約において,受益者に対する費用補償請求権を定めた旧信託法(平成18年法律第109号による改正前のもの。以下同じ。)36条2項本文の適用を排除する旨の合意が成立していたとはいえない。
(1) 上記信託契約締結当時,公有地の信託といえども旧信託法36条2項本文の適用があるのが原則であることが公有地の信託に関わる関係者の共通認識であり,県もその例外ではなかったにもかかわらず,上記信託契約の締結に至るまでの間に,県と信託銀行との間において,旧信託法36条2項本文の適用を排除するための交渉がもたれたことは全くうかがわれない。
(2) 上記信託契約に係る契約書には,「信託事務に必要な費用は,信託財産から支弁する。」,「信託終了に要する費用は,信託財産から支弁する。」との条項があるが,上記各条項には旧信託法36条2項本文の適用を排除する趣旨の文言はなく,上記契約書には,ほかに同項本文の適用を排除する旨を文言上明確に定めた条項はない。
(3) 上記信託契約締結後,信託事業の収支が悪化し,県は,信託事業に資金不足が生じた場合の処理方法について信託銀行と協議を重ねるようになったが,その協議の過程において,県が信託銀行に対し自己の費用補償義務を否定するような態度を示したことはうかがわれず,県がこれを明確に否定したのは,上記協議の開始から約2年9か月経過した後のことであった。
(補足意見がある。)
- 参照法条
旧信託法(平成18年法律第109号による改正前のもの)36条2項本文,民法91条
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