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最高裁判所判例集

事件番号

 平成23(受)1259

事件名

 解雇無効確認等請求事件

裁判年月日

 平成26年3月24日

法廷名

 最高裁判所第二小法廷

裁判種別

 判決

結果

 その他

判例集等巻・号・頁

 集民 第246号89頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

 平成20(ネ)2954

原審裁判年月日

 平成23年2月23日

判示事項

 労働者に過重な業務によって鬱病が発症し増悪した場合において,使用者の安全配慮義務違反等に基づく損害賠償の額を定めるに当たり,当該労働者が自らの精神的健康に関する一定の情報を使用者に申告しなかったことをもって過失相殺をすることができないとされた事例

裁判要旨

 労働者に過重な業務によって鬱病が発症し増悪した場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,使用者の安全配慮義務違反等に基づく損害賠償の額を定めるに当たり,当該労働者が自らの精神的健康に関する一定の情報を使用者に申告しなかったことをもって過失相殺をすることはできない。
(1) 当該労働者は,鬱病発症以前の数か月に休日や深夜を含む相応の時間外労働を行い,その間,最先端の製品の製造に係るプロジェクトの工程で初めて技術担当者のリーダーになってその職責を担う中で,業務の期限や日程を短縮されて督促等を受け,上記工程の技術担当者を理由の説明なく減員された上,過去に経験のない異種の製品の開発等の業務も新たに命ぜられるなど,その業務の負担は相当過重であった。
(2) 上記情報は,神経科の医院への通院,その診断に係る病名,神経症に適応のある薬剤の処方等を内容とし,労働者のプライバシーに属する情報であり,人事考課等に影響し得る事柄として通常は職場において知られることなく就労を継続しようとすることが想定される性質の情報であった。
(3) 上記(1)の過重な業務が続く中で,当該労働者は,同僚から見ても体調が悪い様子で仕事を円滑に行えるようには見えず,頭痛等の体調不良が原因であると上司に伝えた上で欠勤を繰り返して重要な会議を欠席し,それまでしたことのない業務の軽減の申出を行い,産業医にも上記欠勤の事実等を伝え,使用者の実施する健康診断でも頭痛,不眠,いつもより気が重くて憂鬱になる等の症状を申告するなどしていた。

参照法条

 民法418条,民法722条2項

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