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最高裁判所判例集

事件番号

 平成25(行ケ)10242

事件名

 審決取消請求事件

裁判年月日

 平成26年7月17日

法廷名

 知的財産高等裁判所

裁判種別

結果

判例集等巻・号・頁

原審裁判所名

原審事件番号

原審裁判年月日

判示事項

裁判要旨

 判決年月日 平成26年7月17日 担 知的財産高等裁判所 第1部

事 件 番 号 平成25年(行ケ)第10242号 部
○発明の名称を「照明装置」とする特許の無効審決について,請求項1,2,4ないし7,
9及び10記載の発明は甲16発明等に基づいて容易想到であるとした審決の判断は誤
りであるとして,審決が取り消された事例
(関連条文) 特許法29条2項
(関連する 権利番号等) 無効2012-800105 ,特許第4457100号,特開
平1-144771号公報,特開2000-280267号公報
1 本件は,発明の名称を「照明装置」とする特許(特許第4457100号 。本件特許)
についての無効審判請求成立審決(無効2010-800105)に対する審決取消訴
訟である。審決は,本件発明1(本件特許の請求項1記載の発明)は,特開平1-14
4771号公報(甲16公報)に記載された発明(甲16発明)及び特開2000-2
80267号公報(甲17公報)記載の事項並びに技術常識に基づいて当業者が容易に
発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受ける
ことができない,また,本件発明2,4ないし7,9及び10(本件特許の請求項2,
4ないし7,9及び10記載の発明)も,同様の理由により特許を受けることができな
いとして,請求成立審決をした。
2 判決は,いずれもライセンサカメラ撮像位置照明用の照明装置である 本件発明1と甲
16発明について,これらの発明には,審決の認定するとおり,光の拡散手段に係る相
違点があると認定したが,次のとおり述べて,審決の容易想到性判断には誤りがあり,
審決は取り消されるべきとした。
「甲16発明は,・・・従来の技術では,照射面のうち,LEDアレイの並設方向(横
方向)の照度にも,これと直交する方向(縦方向)の照度にも偏りが生じ,縦方向の有
効照射巾が狭く,かつ均一な照度を得られないという課題を解決するため,光を無指向
に散乱させる散乱シート2(ポリエステルフィルム上に微粉末からなる光拡散層)を設
けることにより,光をLEDアレイの並設方向にも,これと直交する方向(縦方向)に
も散乱させ,照射面については均一な照度となるようにし,その縦方向については有効
照射巾を拡大できるようにしたものである。
そうすると,甲16発明は,主としてLEDアレイの並設方向に光を集中的に拡散さ
せることを課題とするものではなく,かえって,これと直交する方向にも光を拡散させ
ることを課題とするものであるから,光を特定の1つの方向にのみ集中的に拡散させる
という機能を有する光拡散体である甲17発明【要旨注:甲17公報記載の発明】を,
甲16発明に組み合わせることは,その動機付けを欠くものであり,当業者が容易に想
到することができるものとは認められないというべきである 。」
「また,甲16発明と本件発明1との関係をみても,甲16発明と 本件発明1とは,
照射面における光のむらを解消することを課題の一部とする点では共通するが,甲16
発明は,照度のユラギを改善して照射面全体における照度を均一とすることを目的とし,
これに加えて,有効照射巾の拡大のため,縦方向にも光を散乱させることを課題とする
ものであり,かつ,その結果として,照射面における一定程度の照度の低下はやむを得
ないことを前提とし・・・,これを防止することは解決課題とはしていないのに対し,
本件発明1は,各LEDの並設方向と直交する方向への光の拡散は課題としておらず,
かえって,同方向へはほとんど拡散させずに,光を無用に減衰させることなく主に各L
EDの並設方向に集光させ,かつ,照度の低下を防止することを必須の課題とするもの
であるから,両発明の解決課題は全体として異なるものである。それだけではなく,本
件発明1は,各LEDの並設方向と直交する方向への光の拡散はほとんどさせないこと
により,光を無用に減衰させることなく集光することを解決手段の1つとするものであ
るから,これとは逆に,同方向への光の拡散を課題の一部とする甲16発明には,本件
発明1を想到することについての阻害要因が存するというべきである。 」

参照法条

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