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最高裁判所判例集

事件番号

 平成30(ネ)10044

事件名

 特許権侵害差止等請求控訴事件

裁判年月日

 平成30年9月26日

法廷名

 知的財産高等裁判所

裁判種別

結果

判例集等巻・号・頁

原審裁判所名

 東京地方裁判所

原審事件番号

 平成28(ワ)27057

原審裁判年月日

判示事項

裁判要旨

 特 判決年月日 平成30年9月26日 担
許 当 知財高裁第4部
権 部
事 件 番 号 平成30年(ネ)第10044号
○ 発明の名称を「光学情報読取装置 」とする 特許に係る特許権侵害 訴訟 事件について
,特許に公然実施発明を主引用例とする 進歩性欠如 の無効理由 があるとして,被控訴
人の無効の抗弁を認め,控訴人の請求を棄却した原判決を維持した事例
○ 控訴審における訂正の再抗弁 の主張を時機に後れた攻撃防御方法に当たる ものとし
て却下した事例
(事件類型)特許権侵害行為差止等 (結論)控訴棄却
(関連条文)特許法29条2項,民事訴訟法297条,157条1項
(関連する権利番号等)特許第3823487号
判 決 要 旨
1 本件は,発明の名称を「光学情報読取装置」とする 特許(特許第382348
7 号 。以 下「 本 件 特 許 」と い う 。 )に 係 る 特 許 権 ( 以 下 「 本 件 特 許 権 」と い う 。)
を 有 し て い た 控 訴 人 が ,被 控 訴 人 に よ る 被 告 製 品 の 販 売 等 が 本 件 特 許 権 の 侵 害 に
当たると 主張し て,被控訴人 に対し ,本 件特許権 侵害の 不法 行為に基 づく損 害賠
償を求めた事案である。
2 原判決(東京地方裁判所平成28年(ワ)第27057号・平成30年4月1
3 日 判 決 )は ,本 件 特 許 出 願 前 に 日 本 国 内 で 販 売 さ れ て い た 2 次 元 バ ー コ ー ド リ
ーダー「IT4400」により公然実施されていた発明(以下「IT4400に
係る発明 」と いう 。)及び 周知技 術に基 づいて当 業者が 特許 発明を容 易に想 到し
得たもの である から ,本件 特許は ,進 歩 性欠如の 無効理 由が あり,特許無 効審判
に よ り 無 効 に す べ き も の と 認 め ら れ る か ら( 以 下「 本 件 無 効 の 抗 弁 」と い う 。),
控訴人の 請求は 理由 がないと して ,これ を棄却し た。控訴人 は,原 判決を 不服と
して本件控訴を提起した。
3 本判 決は ,本件 無効の抗 弁は理 由が あるもの と 認め ,ま た,控 訴人が 控訴審 で
提出した 本件無 効の 抗弁に対 する訂 正の 再抗弁(以下「本 件 訂正の再 抗弁 」とい
う。)の主張は,時機に後れた攻撃防御方法に当たるとして,第1回口頭弁論期
日において,これを却下し,本件控訴を棄却した。その理由の要旨は,次のとお
りである。
⑴ 本件無効の抗弁について
IT4400に係る発明に接した当業者は,絞りが結像レンズの間に配置さ
れているIT4400に係る発明においては,受光素子ごとにマイクロレンズ
(集光レンズ)が設けられた固体撮像素子(CCDセンサ)の周辺部における
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受光素子に有効に入射しなくなる結果,周辺部における受光素子の光量が光学
的センサの中心部における光量に比して不足するという周知の問題が生じ得る
ことを認識し,このような問題を解決するために,「絞り」を複数のレンズで
構成される結合レンズの全てのレンズよりも被写体側に配置するという周知の
構成を採用する動機付けがあったものと認められる。
したがって,当業者は,IT4400に係る発明及び周知技術に基づいて,
同発明において,「読み取り対象からの反射光が絞りを通過した後に結像レン
ズに入射するよう,絞りを配置することによって,光学的センサから射出瞳位
置 ま で の 距 離 を 相 対 的 に 長 く 設 定 」す る 構 成( 相 違 点 1 に 係 る 特 許 発 明 の 構 成 )
とすることを容易に想到することができたものと認められる。
また,当業者は,IT4400に係る発明において相違点2に係る特許発明
の構成を適用することを容易に想到することができたものと認められる。
したがって,本件発明はIT4400に係る発明及び周知技術に基づいて当
業者が容易に発明をすることができたものと認められる。
⑵ 本件訂正の再抗弁について
① 控訴人 は,原審にお いて ,本件 無効の抗 弁が主 張さ れ,別 件侵害 訴訟及 び
別 件 無 効 審 判 に お い て も ,本 件 無 効 の 抗 弁 と 同 じ 無 効 の 抗 弁 又 は 無 効 理 由 が 主
張 さ れ ,さ ら に ,別 件 侵 害 訴 訟 に お い て 上 記 無 効 の 抗 弁 を 容 れ た 請 求 棄 却 判 決
の 言 渡 し が さ れ た が ,原 審 口 頭 弁 論 終 結 時 ま で に 本 件 無 効 の 抗 弁 に 対 す る 訂 正
の 再 抗 弁 を 主 張 し な か っ た こ と ,② そ の 後 ,本 件 無 効 の 抗 弁 を 容 れ た 原 判 決 の
言 渡 し が さ れ た が ,控 訴 人 は ,控 訴 理 由 書 提 出 期 限 に 提 出 し た 控 訴 理 由 書 に お
い て は 本 件 無 効 の 抗 弁 に 対 す る 訂 正 の 再 抗 弁 を 主 張 せ ず ,そ の 後 に 被 控 訴 人 か
ら 控 訴 理 由 書 に 対 す る 反 論 の 準 備 書 面 が 提 出 さ れ た 後 ,当 審 第 1 回 口 頭 弁 論 期
日 の 4 日 前 に な っ て 初 め て ,本 件 訂 正 の 再 抗 弁 の 主 張 を 記 載 し た 準 備 書 面 を 提
出したこ とが認 めら れる。一方で ,控 訴 人におい て,上記時 期まで本 件訂正 の
再 抗 弁 を 主 張 し な か っ た こ と に つ い て ,や む を 得 な い と い え る だ け の 特 段 の 事
情はうかがわれない。
したがって,本件訂正の再抗弁の主張は,控訴人の少なくとも重大な過失に
より時機に後れて提出された攻撃防御方法であるものというべきであり,これ
により訴訟の完結を遅延させることとなることは明らかであるから,民事訴訟
法297条において準用する157条1項に基づき,これを却下した。
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参照法条

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