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最高裁判所判例集

事件番号

 平成29(ネ)10097

事件名

 職務発明対価金請求控訴事件

裁判年月日

 平成30年10月23日

法廷名

 知的財産高等裁判所

裁判種別

結果

判例集等巻・号・頁

原審裁判所名

 東京地方裁判所

原審事件番号

 平成25(ワ)30271

原審裁判年月日

判示事項

裁判要旨

 特 判決年月日 平成30年10月23日
許 知財高裁第1部
権 事 件 番 号 平成29年(ネ)第10097号
○ 控訴人がリチウムイオン二次電池等に関する職務発明について使用者である被控訴
人に特許を受ける権利を承継させたところ,被控訴人が同発明に関する独占権に基づき
受けるべき利益は存しない,又はその利益の額は微々たるもので既払額を超えないなど
として,同発明について特許を受ける権利を承継させたことに対する相当の対価の支払
請求を棄却すべきものとした事例。
(事件類型)職務発明対価支払 (結論)控訴棄却
(関連条文)平成16年法律第79号による改正前の特許法35条3項
(関連する権利番号等)特許第3287732号,特許第3359164号,特許第34
95814号,特許第3559720号,特許第3619000号,特許第362070
3号
判 決 要 旨
1 本件は,控訴人が,リチウムイオン二次電池等に関する発明(本件各職務発明。関連
する日本特許数は6)について使用者である被控訴人に特許を受ける権利を承継させたと
ころ,被控訴人は,本件各職務発明の実施品である電池を譲渡するなどして独占の利益を
得たとして,被控訴人に対し,平成16年法律第79号による改正前の特許法35条3項
に基づく相当の対価の支払を求める事案である。
2 原判決(東京地方裁判所平成25年(ワ)第30271号・平成29年10月27日判
決)は,控訴人が被控訴人に本件各職務発明について特許を受ける権利を承継させたこと
に対する相当の対価は存しない,又はその額は既払額を超えないとして,控訴人の請求を
いずれも棄却した。
3 本判決は,原判決と同様に,相当の対価は存しない,又はその額は既払額を超えるも
のではないと判断したところ,そのうち,本件発明1-3(欧州特許第0690520号
の請求項1に記載された発明)及び本件発明2-1-①(日本特許第3359164号の
請求項1に記載された発明)について,新規性がなく技術的優位性が認められないなどの
被控訴人の主張に関して,以下のとおり判示した。
本件発明1-3について
「職務発明により使用者等が受けるべき利益(改正前特許法35条4項参照)は,当該
職務発明に関する独占権に基づくものであるから,当該利益は,当該職務発明が従来技術
と比較して技術的優位性を有する特徴的部分から生じるものである。そして,職務発明が
従来技術と比較して技術的優位性を有する特徴的部分は,当該職務発明の特許請求の範囲
の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する部分をもって認定され
るべきである。」
-1-
課題,解決手段及び効果から把握されるところの,「本件発明1-3の技術的思想は,
乙1考案に全て含まれるから,従来技術に見られない特有のものということはできない。
したがって,本件発明1-3の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有
の技術的思想を構成する部分は,存しないといわざるを得ない。」
「本件発明1-3の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的
思想を構成する部分は存しないから,本件発明1-3が,従来技術と比較して技術的優位
性を有する特徴的部分を備えているということはできない。」
「仮に,本件発明1-3…の実施品であるLP-E6電池を譲渡したことにより被控訴
人が利益を得ていたとしても,本件発明1-3…により被控訴人が受けるべき利益は存し
ない,又はその利益の額は微々たるものというべきである。」
本件発明2-1-①について
「本件発明2-1-①が従来技術と比較して技術的優位性を有する特徴的部分を有して
いたとしても,本件発明2-1-①の実施品であるNP-FV50電池が,当該特徴的部
分を用いていない場合や,従来技術を利用するにとどまり当該特徴的部分を用いたものと
評価できない場合においては,本件発明2-1-①がNP-FV50電池により実施され
ることによって被控訴人が利益を受けたということはできない。」
「NP-FV50電池は,本件発明2-1-①が従来技術と比較して技術的優位性を有
する特徴的部分のうち,両性金属の性質に関する特徴的部分を用いておらず,負極活物質
の粒径に関する特徴的部分を用いたものとは評価できないというべきである。」
仮に,A社が「本件発明2-1-①…の実施品であるNP-FV50電池を生産使用譲
渡等したことにより被控訴人が利益を得ていたとしても,本件発明2-1-①…により被
控訴人が受けるべき利益は存しない,又はその利益の額は微々たるものというべきであ
る。」
-2-

参照法条

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