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最高裁判所判例集

事件番号

 平成29(行ヒ)423

事件名

 鳴門市競艇従事員共済会への補助金違法支出損害賠償等請求事件

裁判年月日

 令和元年10月17日

法廷名

 最高裁判所第一小法廷

裁判種別

 判決

結果

 その他

判例集等巻・号・頁

 集民 第262号119頁

原審裁判所名

 高松高等裁判所

原審事件番号

 平成28(行コ)26

原審裁判年月日

 平成29年8月3日

判示事項

 1 市の経営する競艇事業の予算に違法な内容が含まれていた場合において,市長が上記予算を調製したことを理由として不法行為に基づく損害賠償責任を負うとはいえないとされた事例
2 市の経営する競艇事業の管理者が違法な補助金の交付決定をした場合において,上記管理者を補助すべき立場にある職員が上記決定に関与したことを理由として不法行為に基づく損害賠償責任を負うとはいえないとされた事例

裁判要旨

 1 市の経営する競艇事業の臨時従事員等により組織される共済会から臨時従事員に対して支給される離職せん別金に充てるため,市が共済会に対してした補助金の交付が,地方自治法204条の2及び地方公営企業法38条4項の定める給与条例主義を潜脱するものとして違法であり,上記事業の予算に上記補助金の支出という違法な内容が含まれていた場合において,次の⑴~⑶など判示の事情の下では,市長が,市に対し,上記予算を調製したことを理由として,不法行為に基づく損害賠償責任を負うということはできない。
⑴ 上記支出が違法であるのは,臨時従事員に対して離職せん別金又は退職手当を支給する条例上の根拠がないこと等によるものであり,上記予算の項目や明細から上記支出が違法であることが明らかであったわけではない。
⑵ 市長が,上記予算の調製に当たり,上記支出が違法であると現実に認識していたとはうかがわれない。
⑶ 上記補助金を交付するか否かは上記事業の管理者が決定するものであり,上記事業における収入及び支出の大枠を定めたものである上記予算の調製により上記補助金が交付されたという直接の関係にあるということはできない。
2 市の経営する競艇事業の管理者が上記事業の臨時従事員等により組織される共済会に対する違法な補助金の交付決定をした場合において,次の⑴~⑶など判示の事情の下では,上記管理者を補助すべき立場にある職員が,市に対し,上記決定に関与したことを理由として,不法行為に基づく損害賠償責任を負うということはできない。
⑴ 上記決定は,上記管理者がその権限に基づいて判断したものであり,上記職員は,上記補助金を交付するか否かを決定する権限を有しない。
⑵ 上記職員は,共済会の会長として上記補助金の交付を申請したが,上記職員が共済会の会長であったのは,共済会の規約が上記職員の職に在る者を会長とする旨を定めていたからである上,上記職員が上記補助金の違法性を認識しながらあえて上記の申請をしたといった事情はうかがわれない。
⑶ 上記職員が上記決定の決裁に関与したために上記管理者が上記補助金を交付するか否かについての判断を誤ったといった事情はうかがわれない。

参照法条

 (1,2につき)
地方自治法242条の2第1項4号
(1につき)
地方公営企業法8条1項,地方公営企業法9条,地方公営企業法16条,地方公営企業法24条1項,地方公営企業法24条2項

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