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最高裁判所判例集

事件番号

 令和1(ネ)10049

事件名

 商標権侵害行為差止等請求控訴事件

裁判年月日

 令和2年3月19日

法廷名

 知的財産高等裁判所

裁判種別

結果

判例集等巻・号・頁

原審裁判所名

 東京地方裁判所

原審事件番号

 平成28(ワ)23327

原審裁判年月日

判示事項

裁判要旨

 商 判決年月日 令和2年3月19日 担
標 当 知財高裁第3部
権 事 件 番 号 令和元年(ネ)第10049号 部
○ 商標法38条2項に基づき商標権侵害による損害を算定するに当たり,同項におけ
る事実上の推定の一部覆滅を認めた事例。
(事件類型)商標権侵害行為差止等 (結論)原判決一部変更
(関連条文)商標法38条2項,民法709条
(関連する権利番号等)商標登録番号第5621414号,商標登録番号第561733
1号
( 原 判 決 ) 東 京 地 方 裁 判 所 平 成 2 8 年 (ワ )第 2 3 3 2 7 号 , 同 第 3 8 5 6 6 号 令 和
元年5月23日判決
判 決 要 旨
1 本件は,①「ブロマガ」の文字及び「BlogMaga」の文字を上下2段に
横 書 き し て 構 成 さ れ ,第 4 2 類「 イ ン タ ー ネ ッ ト に お け る ブ ロ グ の た め の サ ー バ
ーの記憶領域の貸与」等を指定商品とする甲商標権を有する控訴人兼被控訴人
(A社)が,被控訴人兼控訴人(B社)に対し,B社が自社の提供するサービス
に「ブロマガ」の標章(乙標章)を使用する行為は,甲商標権を侵害するなどと
主張して ,そ の差止 め,商 標法3 8条2 項又は3 項の損 害金 の支払 等 を求め(第
1事件),②「ブロマガ」の文字を標準文字で表し,第41類「電子出版物の提
供」等 を指定 商品と する乙商 標権を 有す る B社が ,A 社に対 し,A 社が自 社の提
供するサービスに「ブロマガ」の標章(甲標章)を使用する行為は,乙商標権を
侵害する などと 主張 して,そ の差止 め,商標法3 8条2 項又 は3項の 損害金 の支
払等を求めた(第2事件)事案である。
原審は,①第1事件について,B社の行為は甲商標権を侵害するとして,損害
賠償請求の一部(約700万円)を認め,②第2事件について,A社の行為は乙
商標権を侵害するとして,甲標章の使用の差止め,甲標章のウェブサイトからの
削除,損害賠償請求の一部(約900万円)を認めた。
A社及びB社は,それぞれ,敗訴部分を不服として控訴を提起した。
2 本判決は,A社の行為は 乙商標権を侵害するとして,甲標章の使用の差止め 等
を 認 め た ほ か ,商 標 権 の 侵 害 に よ る 商 標 法 3 8 条 2 項 の 損 害 額 を 約 1 0 0 0 万 円
と認定し,損害額についての原審の判断を変更した。
本判決の損害論についての判断の概要は,以下のとおりである。
商標法38条2項における推定の覆滅については,侵害者が得た利益と商標権
者が受けた損害との相当因果関係を阻害する事情がこれに当たると解される。例
え ば ,商 標 権 者 と 侵 害 者 の 業 務 態 様 等 に 相 違 が 存 在 す る こ と( 市 場 の 非 同 一 性 ),
-1-
市場における競合品・競合サービスの存在,侵害者の営業努力(ブランド力,宣
伝広告),侵害品・侵害サービスの性能(機能,デザイン,サービス内容等商標
以外の特徴)などの事情について,推定覆滅の事情として考慮することができる
ものと解される。
これを本件についてみると,B社が提供するブロマガの配信サービスとA社が
提供するブロマガの配信サービスとは,いずれもブログ記事を配信するサービス
であるという点で共通する。
一方,①両者のサービス態様には相当な相違が存在すること,②A社が提供す
るブログの機能の一つであることを主な理由として,「ブロマガ」の配信の役務
を利用した者も多いこと,③A社におけるブロマガの配信サービスの売上げは,
ブログ記事の投稿者の知名度や記事の内容の貢献度が高いものと考えられること
などの事情からすると,甲標章が,A社におけるブロマガの配信サービスによる
利益の全てに貢献しているとはいえないから,同サービスによる利益の全額をB
社の逸失利益と認めるのは相当でなく,同サービスにおいては,商標法38条2
項における事実上の推定が,約96%の限度で覆滅されるというべきである。
-2-

参照法条

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