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最高裁判所判例集

事件番号

 平成31(受)491

事件名

 損害賠償請求事件

裁判年月日

 令和3年5月17日

法廷名

 最高裁判所第一小法廷

裁判種別

 判決

結果

 その他

判例集等巻・号・頁

 集民 第265号267頁

原審裁判所名

 大阪高等裁判所

原審事件番号

 平成28(ネ)863

原審裁判年月日

 平成30年9月20日

判示事項

 建材メーカーが,自らの製造販売する石綿含有建材を使用する屋外の建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した者に対し,上記石綿含有建材に当該建材から生ずる粉じんにばく露すると重篤な石綿関連疾患にり患する危険があること等の表示をすべき義務を負っていたとはいえないとされた事例

裁判要旨

 屋外の建設現場における石綿含有建材の切断,設置等の作業に従事する者が石綿粉じんにばく露したことにより肺がんにり患した場合において,次の⑴~⑶など判示の事情の下では,建材メーカーが,昭和50年から平成2年までの期間に,自らの製造販売する石綿含有建材を使用する上記作業に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができたとはいえず,上記期間に,上記の者に対し,上記石綿含有建材に当該建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿肺,肺がん,中皮腫等の重篤な石綿関連疾患にり患する危険があること等の表示をすべき義務を負っていたとはいえない。
⑴ 上記作業に係る石綿粉じん濃度の測定結果には低い数値が示されている。
⑵ 上記作業に従事する者が石綿含有建材の切断作業に従事するのは就業時間中の限られた時間であり,上記測定結果は主にその切断作業をしている限られた時間につき個人ばく露濃度を測定したものであることからすれば,上記の者が就業時間を通じてばく露する石綿粉じんの平均濃度は上記測定結果より低い数値になるということができる。
⑶ 上記測定結果は,全体として屋内の作業に係る石綿粉じん濃度の測定結果を大きく下回るところ,これは,屋外の作業場においては,屋内の作業場と異なり,風等により自然に換気がされ,石綿粉じん濃度が薄められるためであることがうかがわれる。

参照法条

 民法709条

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