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最高裁判所判例集

事件番号

 平成31(受)596

事件名

 損害賠償請求事件

裁判年月日

 令和3年5月17日

法廷名

 最高裁判所第一小法廷

裁判種別

 判決

結果

 破棄差戻

判例集等巻・号・頁

 民集 第75巻6号2303頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

 平成24(ネ)8328

原審裁判年月日

 平成30年3月14日

判示事項

 原告らの採る立証手法により特定の建材メーカーの製造販売した石綿含有建材が特定の建設作業従事者の作業する建設現場に相当回数にわたり到達していたとの事実が立証され得ることを一律に否定した原審の判断に経験則又は採証法則に反する違法があるとされた事例

裁判要旨

 次の⑴から⑸までの手順による立証手法により,特定の建材メーカーの製造販売した石綿含有建材が特定の建設作業従事者の作業する建設現場に相当回数にわたり到達していたとの事実が立証され得ることを一律に否定した原審の判断には,経験則又は採証法則に反する違法がある。
⑴ 国土交通省及び経済産業省により公表されているデータベースに掲載されるなどした石綿含有建材を複数の種別に分類し,そのうち,建設作業従事者らの職種ごとに,直接取り扱う頻度が高く,取り扱う時間も長く,取り扱う際に多量の石綿粉じんにばく露するといえる種別を選定する。
⑵ 上記のとおり選定された種別に属する石綿含有建材のうち,上記建設作業従事者らが建設作業に従事していた地域での販売量が僅かであるもの等を除外し,さらに,上記建設作業従事者ごとに,建設作業に従事した期間とその建材の製造期間との重なりが1年未満である可能性のあるもの等を除外する。
⑶ 上記⑴及び⑵により上記建設作業従事者ごとに特定した石綿含有建材のうち,同種の建材の中での市場占有率がおおむね10%以上であるものは,その市場占有率を用いた確率計算を考慮して,上記建設作業従事者の作業する建設現場に到達した蓋然性が高いものとする。
⑷ 上記建設作業従事者がその取り扱った石綿含有建材の名称,製造者等につき具体的な記憶に基づいて供述等をする場合には,その供述等により上記建設作業従事者の作業する建設現場に到達した石綿含有建材を特定することを検討する。
⑸ 建材メーカーらから,自社の石綿含有建材につき販売量が少なかったこと等が具体的な根拠に基づいて指摘された場合には,その建材を上記⑴から⑷までにより特定したものから除外することを検討する。

参照法条

 民法719条1項後段,民訴法247条

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