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最高裁判所判例集

事件番号

 令和2(あ)457

事件名

 不正指令電磁的記録保管被告事件

裁判年月日

 令和4年1月20日

法廷名

 最高裁判所第一小法廷

裁判種別

 判決

結果

 破棄自判

判例集等巻・号・頁

 刑集 第76巻1号1頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

 令和1(う)883

原審裁判年月日

 令和2年2月7日

判示事項

 1 刑法168条の2第1項にいう「その意図に沿うべき動作をさせず,又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」に当たるか否かの判断方法
2 ウェブサイトの閲覧者の同意を得ることなくその電子計算機を使用して仮想通貨のマイニングを行わせるプログラムコードが不正指令電磁的記録に当たらないとされた事例

裁判要旨

 1 刑法168条の2第1項の反意図性(「その意図に沿うべき動作をさせず,又はその意図に反する動作をさせるべき」という要件)は,当該プログラムについて一般の使用者が認識すべき動作と実際の動作が異なる場合に肯定されるものと解するのが相当であり,一般の使用者が認識すべき動作の認定に当たっては,当該プログラムの動作の内容に加え,プログラムに付された名称,動作に関する説明の内容,想定される当該プログラムの利用方法等を考慮する必要があり,同項の不正性(「不正な」という要件)は,電子計算機による情報処理に対する社会一般の信頼を保護し,電子計算機の社会的機能を保護するという観点から,社会的に許容し得ないプログラムについて肯定されるものと解するのが相当であり,その判断に当たっては,当該プログラムの動作の内容に加え,その動作が電子計算機の機能や電子計算機による情報処理に与える影響の有無・程度,当該プログラムの利用方法等を考慮する必要がある。
2 ウェブサイトの閲覧者の同意を得ることなくその電子計算機を使用して仮想通貨のマイニングを行わせるプログラムコードは,ウェブサイトの収益方法として閲覧者の電子計算機にマイニングを行わせるという仕組みは一般の使用者に認知されていなかったことなどの判示の事情(判文参照)の下では,その動作を一般の使用者が認識すべきとはいえず,刑法168条の2第1項の反意図性(「その意図に沿うべき動作をさせず,又はその意図に反する動作をさせるべき」という要件)が認められるが,①その動作が閲覧者の電子計算機の機能等に与える影響は,閲覧中に中央処理装置を一定程度使用することにとどまり,その程度も,消費電力が若干増加したり処理速度が遅くなったりするが,閲覧者がその変化に気付くほどのものではなかったこと,②ウェブサイトの運営者が閲覧を通じて利益を得る仕組みは,ウェブサイトによる情報の流通にとって重要であるところ,同プログラムコードはそのような収益の仕組みとして利用されたものである上,そのような仕組みとして社会的に受容されている広告表示プログラムと比較しても,閲覧者の電子計算機の機能等に与える影響に有意な差異はなく,利用方法等も同様であって,これらの点は社会的に許容し得る範囲内といえることなどの判示の事情(判文参照)の下では,社会的に許容し得ないものとはいえず,同項の不正性(「不正な」という要件)は認められないため,不正指令電磁的記録とは認められない。

参照法条

 (1,2につき)刑法168条の2第1項,刑法168条の3

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