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最高裁判所判例集

事件番号

 令和3(行ヒ)285

事件名

 行政措置要求判定取消、国家賠償請求事件

裁判年月日

 令和5年7月11日

法廷名

 最高裁判所第三小法廷

裁判種別

 判決

結果

 その他

判例集等巻・号・頁

 民集 第77巻5号1171頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

 令和2(行コ)45

原審裁判年月日

 令和3年5月27日

判示事項

 生物学的な性別が男性であり性同一性障害である旨の医師の診断を受けている一般職の国家公務員がした職場の女性トイレの使用に係る国家公務員法86条の規定による行政措置の要求は認められない旨の人事院の判定が、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるとされた事例

裁判要旨

 生物学的な性別が男性であり性同一性障害である旨の医師の診断を受けている一般職の国家公務員である者に対し、その執務室がある庁舎のうち上記執務室がある階とその上下の階の女性トイレの使用を認めず、それ以外の階の女性トイレの使用を認める旨の処遇が実施されている場合において、次の⑴~⑷など判示の事情の下においては、上記の者がした職場の女性トイレの使用に係る国家公務員法86条の規定による行政措置の要求は認められない旨の人事院の判定は、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となる。
⑴ 上記の者は、上記処遇の下において、自認する性別と異なる男性用のトイレを使用するか、上記執務室がある階から離れた階の女性トイレ等を使用せざるを得ない。
⑵ 上記の者が所属する省において開かれた、その者が執務する部署の職員に対しその者の性同一性障害について説明する会においては、その者が上記執務室がある階の女性トイレを使用することについて、担当職員から数名の女性職員が違和感を抱いているように見えたにとどまり、明確に異を唱える職員がいたことはうかがわれない。
⑶ 上記の者は、女性ホルモンの投与を受けるなどしているほか、性衝動に基づく性暴力の可能性は低い旨の医師の診断も受けており、上記の説明会の後、女性の服装等で勤務し、上記執務室がある階から2階以上離れた階の女性トイレを使用するようになったことでトラブルが生じたことはない。
⑷ 上記の説明会から上記判定に至るまでの約4年10か月の間に、上記の者による上記庁舎内の女性トイレの使用につき、特段の配慮をすべき他の職員が存在するか否かについての調査が改めて行われ、上記処遇の見直しが検討されたことはうかがわれない。
(補足意見がある。)

参照法条

 国家公務員法71条1項、国家公務員法86条、国家公務員法87条

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