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最高裁判所判例集

事件番号

 令和4(受)1780

事件名

 退職慰労金等請求事件

裁判年月日

 令和6年7月8日

法廷名

 最高裁判所第一小法廷

裁判種別

 判決

結果

 破棄自判

判例集等巻・号・頁

 民集 第78巻3号839頁

原審裁判所名

 福岡高等裁判所  宮崎支部

原審事件番号

 令和3(ネ)182

原審裁判年月日

 令和4年7月6日

判示事項

 退任取締役の退職慰労金について内規に従って決定することを取締役会に一任する旨の株主総会決議がされた場合に、上記退任取締役に対し上記内規の定める基準額から減額した退職慰労金を支給する旨の取締役会決議に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえないとされた事例

裁判要旨

 退任取締役の退職慰労金につき、退任時の報酬月額等により一義的に定まる額を基準とするが、退任取締役のうち在任中特に重大な損害を与えたものに対しこの基準額を減額することができること等を定める内規が存在する株式会社の株主総会において、取締役を退任する者の退職慰労金について、上記内規に従って決定することを取締役会に一任する旨の決議がされた場合に、次の⑴~⑷など判示の事情の下では、上記会社の取締役会がした、上記の者に対し、同人の退職慰労金に係る基準額として算出した3億7720万円から減額した額である5700万円の退職慰労金を支給する旨の決議に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。
⑴ 上記取締役会は、上記の者が、代表取締役在任中に、①長期間にわたって上記会社から社内規程所定の上限額を超過する額の宿泊費等を受領し、このことが発覚した後には、いったん負担した当該超過分に係る源泉徴収税相当額を上記会社に転嫁するとともに、社内規程に違反する宿泊費等の支給を実質的に永続化する目的で自らの報酬を増額したこと、②複数年度にわたり、交際費として従前の支出額を大幅に超過する額を上記会社に支出させるなどしたこと等を考慮して上記決議をした。
⑵ 上記の者と利害関係のない弁護士等で構成された調査委員会による調査等の結果をとりまとめた調査報告書では、上記①の行為は特別背任罪に該当する疑いがあり、上記②の行為も正当化することができず、上記の者はこれらの行為により上記会社に多大な損害を与えたとの指摘がされた。
⑶ 上記決議は上記調査報告書の内容を踏まえたものであったところ、上記調査委員会が調査等に当たって収集した情報に不足があったことはうかがわれない。
⑷ 上記取締役会は、上記①の行為につき告訴をして退職慰労金を支給しないとする上記調査委員会から提示された案も検討したが、審議の結果、告訴をせずに退職慰労金を大幅に減額する旨の判断に至った。

参照法条

 会社法361条1項1号

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