裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
令和6(許)5
- 事件名
文書提出命令に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件
- 裁判年月日
令和6年10月16日
- 法廷名
最高裁判所第二小法廷
- 裁判種別
決定
- 結果
破棄自判
- 判例集等巻・号・頁
- 原審裁判所名
大阪高等裁判所
- 原審事件番号
令和5(ラ)1152
- 原審裁判年月日
令和6年1月22日
- 判示事項
検察官が被疑者として取り調べた者の供述及びその状況を録音及び録画を同時に行う方法により記録した記録媒体が、民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当するとして文書提出命令の申立てがされた場合に、刑訴法47条に基づきその提出を拒否した上記記録媒体の所持者である国の判断が、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとされた事例
- 裁判要旨
刑事事件の被疑者の1人として逮捕、勾留され、上記刑事事件について起訴されたが、無罪判決を受けたXが、上記の逮捕、勾留及び起訴が違法であると主張して国家賠償を求める本案訴訟において、検察官がAを上記刑事事件の被疑者の1人として取り調べる際にAの供述及びその状況を録音及び録画を同時に行う方法により記録した記録媒体のうちXに係る上記刑事事件の公判において取り調べられなかった部分について、民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当することを理由として文書提出命令の申立てをした場合に、刑訴法47条に基づきその提出を拒否した上記部分の所持者である国の判断は、次の⑴~⑶など判示の事情の下では、その裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものである。
⑴ 上記本案訴訟においては、AがXとの共謀の有無に関連して従前と異なる供述をするに至ったことに対する検察官Bの言動の影響の有無、程度、内容等が深刻に争われているところ、その審理を担当する原々審は、上記部分がBのAに対する取調べの具体的状況及び内容を立証するのに最も適切な証拠であり、上記記録媒体の一部分の反訳書面や人証によって代替することは困難であるとして、上記部分を取り調べる必要性の程度が高いと判断した。
⑵ Xが、Aに対し、Aが上記の供述をしたこと等によりXをえん罪に陥れたと主張して損害賠償を求める訴訟において、XとAとの間に訴訟上の和解が成立し、上記和解において、Aが上記記録媒体の証拠採用に反対せず、XもAのプライバシーの保護に最大限配慮することを明確に合意している。
⑶ 上記刑事事件に関与したとされる者のうち、Xについては無罪判決が確定し、X以外の者について捜査や公判が続けられていることもうかがわれない。
(補足意見がある。)
- 参照法条
民訴法220条3号、刑訴法47条、刑訴法301条の2
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