裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
令和5(受)927
- 事件名
損害賠償請求事件
- 裁判年月日
令和7年3月7日
- 法廷名
最高裁判所第二小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
破棄差戻
- 判例集等巻・号・頁
- 原審裁判所名
広島高等裁判所
- 原審事件番号
令和4(ネ)265
- 原審裁判年月日
令和5年2月15日
- 判示事項
都道府県警察所属の警部補が自殺した場合において、当該都道府県警察を置く都道府県が、上記警部補の上司らが上記警部補の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務に違反したことを理由として国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負うとされた事例
- 裁判要旨
都道府県警察所属の警部補が自殺した場合において、次の⑴~⑹など判示の事情の下では、当該都道府県警察を置く都道府県は、上記警部補の上司らが上記警部補の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務に違反したことを理由として国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負う。
⑴ 上記警部補の自殺直前の1か月間における時間外勤務時間数は、その前の1か月間における約43時間から、その倍以上に増加して112時間を超えるに至っており、上記警部補が自殺直前の時期に行っていた業務の量は、従前から行っていた業務に相当程度の負荷を伴う複数の業務が加わることによって大きく増加していた。
⑵ 上記警部補は、自殺直前の1か月間に、僅か1日の休みを挟んで14日間もの連続勤務を2回にわたり行っており、これらの連続勤務の中には、拘束時間が24時間に及ぶ当直の勤務がそれぞれ5回含まれていた上、上記警部補は、各当直明けの非番の日にも相当の時間の勤務を行った。
⑶ 上記警部補が自殺の当時発症していたうつ病エピソードについて、上記警部補が自殺直前の時期に行っていた業務のほかには、その発症に寄与したと解すべき事情はうかがわれない。
⑷ 上記上司らは、上記警部補について上記の複数の業務が加わったことを当然に把握している立場にあった上、上記警部補が勤務する交番の勤務日誌を閲覧し、上記上司らのうち1人は上記警部補から時間外勤務実績報告書の提出も受けていた。
⑸ 上記上司らのうち1人は、上記警部補が自殺の3か月ほど前に受けたストレス診断で最低評価となっていたことを知っていた。
⑹ 上記上司らは、上記警部補の負担を軽減するための具体的な措置を講じていない。
(補足意見がある。)
- 参照法条
国家賠償法1条1項
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