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高等裁判所 判例集

事件番号

 平成17(ラ)429

事件名

 新株予約権発行差止仮処分決定認可決定に対する保全抗告

裁判年月日

 平成17年3月23日

裁判所名・部

 東京高等裁判所  第16民事部

結果

 棄却

高裁判例集登載巻・号・頁

 第58巻1号39頁

原審裁判所名

 東京地方裁判所

原審事件番号

 平成17(モ)3074

判示事項

 1 株式の敵対的買収に対する対抗措置としてされた新株予約権の発行が商法280条ノ39第4項,280条ノ10の「著シク不公正ナル方法」による発行に該当する場合
2 株式の敵対的買収に対抗して現経営陣に事実上の影響力を及ぼす関係にある特定の株主による経営支配権を確保することを主要な目的とする新株予約権の発行が対抗手段としての正当な事由がなく商法280条ノ39第4項,280条ノ10の「著シク不公正ナル方法」による発行に当たるとされた事例

裁判要旨

 1 会社の経営支配権に現に争いが生じている場面において,株式の敵対的買収によって経営支配権を争う特定の株主の持株比率を低下させ,現経営者又はこれを支持し事実上の影響力を及ぼしている特定の株主の経営支配権を維持・確保することを主要な目的として新株予約権の発行がされた場合には,原則として商法280条ノ39第4項,280条ノ10の「著シク不公正ナル方法」による新株予約権の発行に該当するが,株式の敵対的買収者が,(1)真に会社経営に参加する意思がないにもかかわらず,ただ株価をつり上げて高値で株式を会社関係者に引き取らせる目的で株式の買収を行っている場合(グリーンメイラー),(2)会社経営を一時的に支配して当該会社の事業経営上必要な知的財産権,ノウハウ,企業秘密情報,主要取引先や顧客等を当該買収者やそのグループ会社等に移譲させるなど,いわゆる焦土化経営を行う目的で株式の買収を行っている場合,(3)会社経営を支配した後に,当該会社の資産を当該買収者やそのグループ会社等の債務の担保や弁済原資として流用する予定で株式の買収を行っている場合,(4)会社経営を一時的に支配して当該会社の事業に当面関係していない不動産,有価証券など高額資産等を売却等処分させ,その処分利益をもって一時的な高配当をさせるかあるいは一時的高配当による株価の急上昇の機会を狙って株式の高価売り抜けをする目的で株式買収を行っている場合など,当該会社を食い物にしようとしている場合には,取締役会は,対抗手段として必要性や相当性が認められる限り,経営支配権の維持・確保を主要な目的とする新株予約権の発行を行うことが正当なものとして許される。
2 乙社が甲社の株式の敵対的買収を行って甲社の経営支配権に現に争いが生じている場面において行われた甲社の新株予約権の発行は,甲社の経営支配権を争う乙社の持株比率を低下させ,現経営者を支持し事実上の影響力を及ぼしている特定の株主であるA社による甲社の経営支配権を確保することを主要な目的として行われたものであり,乙社が甲社の事業や資産を食い物にするような目的で株式の敵対的買収を行っている確たる証拠がないという判示の事情の下では,これを正当化する特段の事情がなく,商法280条ノ39第4項,280条ノ10の「著シク不公正ナル方法」による発行に当たる。

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