裁判例結果詳細
高等裁判所 判例集
- 事件番号
平成9(の)1
- 事件名
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反被告事件
- 裁判年月日
平成9年12月24日
- 裁判所名・部
東京高等裁判所 第三特別部
- 結果
- 高裁判例集登載巻・号・頁
第50巻3号181頁
- 原審裁判所名
- 原審事件番号
- 判示事項
一 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下独占禁止法という)八九条一項一号の不当な取引制限の罪の性質
二 東京都が発注する水道メーターについての談合につき独占禁止法八九条一項一号の不当な取引制限の罪が各年度ごとに成立するとされた事例
三 東京都が発注する水道メーターについての談合により独占禁止法八九条一項一号の罪が既遂になるとされた事例
四 中小企業保護のための談合であっても独占禁止法八九条一項一号の罪の違法性は阻却されないとされた事例
- 裁判要旨
一 独占禁止法八九条一項一号の罪は、相互拘束行為等が行われて競争が実質的に制限されることにより既遂となるが、その時点では終了せず、競争が実質的に制限されているという行為の結果が消滅するまでは継続して成立する。
二 東京都が指名競争入札等の方法により発注する水道メーターについて受注事業者間でした談合が次年度以降も見通して各被告会社を拘束することを予定した継続的な方策であったとは認められないなど判示の事実関係の下においては、各年度ごとの談合によりそれぞれ新たな不当な取引制限という法益侵害が生じており、各年度ごとに独占禁止法八九条一項一号の不当な取引制限の罪が成立する。
三 東京都が指名競争入札等の方法により発注する水道メーターについて受注事業者間でした談合により各年度内における受注調整の方法が具体的に決定されたという判示の事実関係の下においては、これにより公共の利益に反して競争が実質的に制限されており、独占禁止法八九条一項一号の既遂罪が成立する。
四 東京都が指名競争入札等の方法により発注する水道メーターについて受注事業者間でした談合は、中小企業を含む事業関係者全員が加わって競争制限を行った点で中小企業の保護という側面があっても、水道メーターの入札価格を東京都の予定単価に近いものとすることを内容とした判示の事実関係の下においては、独占禁止法の価値を侵害して国民の経済的利益に反する危険を内包しており、その違法性は阻却されない。
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