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高等裁判所 判例集

事件番号

 平成8(ネ)2255

事件名

 貸物引渡等請求事件

裁判年月日

 平成8年12月25日

裁判所名・部

 東京高等裁判所  第九民事部

結果

高裁判例集登載巻・号・頁

 第49巻3号109頁

原審裁判所名

原審事件番号

判示事項

 一 わが国内における裁判籍が民事訴訟法二一条の規定によって認められるにすぎない渉外的民事訴訟につきわが国の国際裁判管轄を肯定すべき場合
二 わが国内における裁判籍が民事訴訟法二一条の規定によって認められるにすぎない渉外的民事訴訟につきわが国の国際裁判管轄が否定された事例
三 国際裁判管轄違背の主張と民事訴訟法三八一条本文の規定の適用ないし類推適用の有無

裁判要旨

 一 わが国内における裁判籍が民事訴訟法二一条の規定によって認められるにすぎない渉外的民事訴訟については、具体的な事案に照らして、わが国の裁判所において裁判を行うことが当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念に適合すると認められる特段の事情が存する場合に限り、わが国の裁判所に国際裁判管轄を肯定すべきである。
二 保険会社である大韓民国法人X1及び中華民國法人X2が、フィリピン船籍の貨物船がルソン島の沖合で沈没した事故により発生した損害について、保険契約者に対し保険金を支払い、当該貨物船の登録船主等である香港法人Y1、Y2に対する損害賠償請求権を代位取得したとして、民事訴訟法二一条により、運送人である日本法人Zに対する損害賠償請求訴訟と併合してわが国の裁判所に提起した訴えについては、Yらがいずれも、わが国において営業活動を行っていないこと、請求自体もわが国と直接の関連性を有するものでなく、わが国で応訴を強いられることによるYらの負担が相当に大きいこと、Zに対する請求とYらに対する請求とは必ずしも統一的な紛争解決を期待すべき関係にあるとはいえないこと、Yらに対する請求の当否に関する証拠資料とわが国との関連性が極めて希薄であることなど判示の事実関係の下においては、わが国の裁判所において裁判を行うことが当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念に適合すると認められる特段の事情が存在するということはできず、わが国の裁判所に国際裁判管轄を肯定することはできない。
三 国際裁判管轄違背の主張については、民事訴訟法三八一条本文の規定の適用ないし類推適用はない。

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