裁判例結果詳細
高等裁判所 判例集
- 事件番号
平成6(う)25
- 事件名
覚せい剤取締法違反被告事件
- 裁判年月日
平成6年7月28日
- 裁判所名・部
東京高等裁判所 第一二刑事部
- 結果
- 高裁判例集登載巻・号・頁
第47巻2号267頁
- 原審裁判所名
- 原審事件番号
- 判示事項
一 運転者の任意の承諾がないのに行われた自動車内の検索が違法とされた事例
二 採尿手続の違法の度合はさほど大きいものではないとして尿についての鑑定書等の証拠能力が否定されないとした事例
- 裁判要旨
一 自動車を外から覗いた際その床上に見えていた白い結晶状の物につき、いわゆる予試験を行って覚せい剤でないことが判明した後、当該自動車を運転していた者の任意の承諾がないのに、引き続いて警察官四名が当該自動車に乗り込んで懐中電灯や集光ライトを用い、座席の背もたれを前に倒したりシートを前後に動かすなどして車内を丹念に調べた本件検索は、所持品検査として許容される範囲を逸脱した違法なものである。
二 自動車内の検索が違法である場合には、これによって覚せい剤を発見したことに基づき行われた当該自動車の運転者に対する覚せい剤所持の現行犯人逮捕の手続も違法であり、さらに、その逮捕状態を利用してなされた採尿手続も違法であるが、その検索が、その者に対し覚せい剤の使用又は所持の疑いを抱いて、自動車内を調べる必要性、緊急性があったと認められる状況の下で行われ、かつ、採尿に当たり、尿の提出を強制などしておらず、その者が自分の尿を任意に提出したものと認められる等の判示の事情があるときは、採尿手続の違法の度合はさほど大きいものではなく、これによって収集された尿についての鑑定書等の証拠能力は否定されない。
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