裁判例結果詳細
高等裁判所 判例集
- 事件番号
平成5(う)751
- 事件名
出入国管理及び難民認定法違反、職業安定法違反被告事件
- 裁判年月日
平成5年11月11日
- 裁判所名・部
東京高等裁判所 第一〇刑事部
- 結果
- 高裁判例集登載巻・号・頁
第46巻3号294頁
- 原審裁判所名
- 原審事件番号
- 判示事項
一 職業安定法六三条二号にいう「労働者の供給」の要件
二 職業安定法六三条二号にいう「労働者の供給」に当たるとされた事例
三 出入国管理及び難民認定法七三条の二第一項二号にいう「自己の支配下に置いた」の意義
四 出入国管理及び難民認定法七三条の二第一項二号にいう「自己の支配下に置いた」に当たるとされた事例
- 裁判要旨
一 職業安定法六三条二号にいう「労働者の供給」には、供給元と労働者の間に事実上の支配関係が存在することが必要であるが、そのためには、供給元が労働者を供給先に供するにつき、単なる紹介にとどまらず、労働者の意思決定に当たって何らかの指示ないし影響を与えうる関係があれば足りる。
二 被告人が、日本語や地理に通じておらず特段の所持金も持ち合わせていない外国人女性に、その旅券等を預かり、バーでホステス兼売春婦として働き借金返済の名目で金員を支払うことを約束させ、就労先のバーのママの住居に居住させるなどして、右女性をホステス兼売春婦として雇い主に引し渡した本件行為(判文参照)は、職業安定法六三条二号にいう「労働者の供給」に当たる。
三 出入国管理及び難民認定法七三条の二第一項二号にいう「自己の支配下に置いた」には、外国人に心理的ないし経済的な影響を及ぼし、その意思を左右しうる状態に置き、自己の影響下から離脱することを困難にさせた場合も含まれる。
四 被告人が、日本語や地理に通じておらず特段の所持金も持ち合わせていない外国人女性に、その旅券等を預かり、借金返済の名目で金員を支払うことを約束させ、就労先のバーのママの住居に連れて行き、同人に依頼してその住居に居住させるなどし、その返済が終わるまで右女性の売春代を全て取得していた本件事実関係の下(判文参照)においては、出入国管理及び難民認定法七三条の二第一項二号にいう「自己の支配下に置いた」に当たる。
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