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高等裁判所 判例集

事件番号

 平成3(う)588

事件名

 兇器準備集合、傷害被告事件

裁判年月日

 平成5年4月28日

裁判所名・部

 東京高等裁判所  第三刑事部

結果

高裁判例集登載巻・号・頁

 第46巻2号44頁

原審裁判所名

原審事件番号

判示事項

 一 刑訴法二一二条二項にいう「罪を行い終ってから間がないと明らかに認められるとき」に当たるとされた事例
二 刑訴法二二〇条一項二号にいう「逮捕の現場」でされた差押に当たるとされた事例

裁判要旨

 一 (一) いわゆる内ゲバ事件が発生した旨の無線情報により警戒中の警察官が、犯行終了後約一時間を経過したころ、犯行現場から直線距離にして約四キロメートル離れた場所で犯人を発見し、職務質問のため停止を求めたのにこれを振り切って逃走しようとする犯人を約三〇〇メートル追跡して追いつき、同所で逮捕行為に着手した場合であっても、犯人を発見した場所が無線情報による犯人の逃走方向の延長線上にあり、時間的にも犯人が現れてよい時刻で、その着衣等も、小雨模様であったのに傘をささず、ジャンパーの袖口がぬれ、靴も泥で汚れていた上、追いついて職務質問をしようとする同警察官ともみあいになった際、袖口がめくれて装着していた籠手が見えたことなどが認められる本件事実関係の下(判文参照)においては、刑訴法二一二条二項にいう「罪を行い終ってから間がないと明らかに認められるとき」に当たる。
(二) いわゆる内ゲバ事件が発生した旨の無線情報等により犯人を検索中の警察官らが、犯行終了後約一時間四〇分を経過したころ、犯行現場から直線距離にして約四キロメートル離れた場所で犯人を発見し、職務質問のため停止を求めたのにこれを無視して小走りに立ち去ろうとする犯人を数十メートル追跡して追いつき、同所で逮捕行為に着手した場合であっても、同警察官らが犯人の逃走したと思われる経路を追跡、検索していた最中に犯人を発見し、その髪はぬれてべっとりとし靴は泥まみれで泥水につけたような状態であり、頬や鼻などに新しい傷痕があって、血の混じった唾をはいたりしていたことなとが認められる本件事実関係の下(判文参照)においては、刑訴法二一二条二項にいう「罪を行い終ってから間がないと明らかに認められるとき」に当たる。
二 (一) 準現行犯逮捕の現場からパトカーで約五分、直線距離にして約五〇〇メートル離れた警察署に被逮捕者を連行後間もなくその両腕に装着していた籠手を差し押さえた場合であっても、逮捕現場は、店舗裏搬入口であって逮捕直後の興奮さめやらぬ被逮捕者の抵抗を抑えて籠手を取り上げるのに適当な場所ではなく、逃走防止のためにも至急パトカーに乗車させる必要があり、かつ、連行中のパトカー内で強制的に籠手を取り外そうとすると被逮捕者が抵抗して混乱することが懸念された本件事実関係の下(判文参照)においては、右差押は、刑訴法二二〇条一項二号にいう「逮捕の現場」でされた差押に当たる。
(二) 準現行犯逮捕の約一時間後に、直線距離にして約三キロメートル余り離れた警察署で被逮捕者が所持していたバッグを差し押さえた場合であっても、逮捕現場は、道幅も狭い道路上であって強制的にバッグを取り上げるのに適当な場所ではなく、また、連行に必要な車がなかったため取りあえず連れて行った付近の駐在所でバッグを取り上げようとしたところ、被逮捕者の激しい抵抗にあってこれを中止せざるを得ず、手配により迎えに来た車で警察署に連行した後ようやく取り上げることができた本件事実関係の下(判文参照)においては、右差押は、刑訴法二二〇条一項二号にいう「逮捕の現場」でされた差押に当たる。

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