裁判例結果詳細
高等裁判所 判例集
- 事件番号
平成2(て)37
- 事件名
逃亡犯罪人引渡審査請求事件
- 裁判年月日
平成2年4月20日
- 裁判所名・部
東京高等裁判所 第五特別部
- 結果
- 高裁判例集登載巻・号・頁
第43巻1号27頁
- 原審裁判所名
- 原審事件番号
- 判示事項
一 逃亡犯罪人引渡法による審査請求について裁判所が行う判断の限界
二 逃亡犯罪人引渡法二条三号及び四号にいわゆる引渡犯罪の双罰性と請求国における適用罰則の判断基準
三 逃亡犯罪人引渡法二条一号にいわゆる政治犯罪人不引渡しの原則が適用される「政治犯罪」の範囲とその判断基準
四 飛行中の民間航空機内で、機体を爆破すると言って乗らを脅迫、畏怖させ、航空機の運行を支配した行為について、逃亡犯罪人引渡法二条一号にいわゆる政治犯罪人不引渡しの原則が適用される「政治犯罪」には当たらないとされた事例
- 裁判要旨
一 逃亡犯罪人引渡法による審査請求について裁判所が行う判断は、審査の対象となっている事案が同法二条各号の引渡し制限規程に該当するか否かについてされるにとどまり、該当しない場合において、引渡しが相当か否かの判断に及ぶものではない。
二 逃亡犯罪人引渡法二条三号及び四号にいわゆる引渡犯罪の双罰性を判断する場合の請求国における適用罰則については、請求国において正当と認められ、統一的に解釈・適用されているところによるのが、わが国の憲法規定その他による法秩序と積極的に抵触しない限り、相当である。
三 逃亡犯罪人引渡法二条一号にいわゆる政治犯罪人不引渡しの原則が適用される「政治犯罪」には、純粋政治犯罪のほか、相対的政治犯罪を含むが、その判断に当たっては、その行為が帯びている政治的性質の強さを、行為の目的、政治目的を達成するのに直接的な有用性ないし関連性の有無、結果の重大性等と意図された目的との均衡、犯罪が行われたにもかかわらずなお全体として保護に値するか否か等の諸点に照らして、事案ごとに検討すべきものである。
四 多数の乗客・乗員を乗せて飛行中の民間航空機内で、機体を爆破すると言って乗員らを脅迫、畏怖させ、航空機の運行を支配した本件行為は、それが現代社会に及ぼす一般的危険性、直接には本人及びその家族の国外逃亡を目的とし、政治目的との間で直接的な有用性ないし関連性が認められないこと、いわゆる天安門事件による処罰が切迫していたとは認められないこと、本件被害の深刻さと本人が目指した目的との均衡が失われ過ぎていること等の本件の具体的状況(判文参照)に照らし、逃亡犯罪人引渡法二条一号にいわゆる政治犯罪人不引渡しの原則が適用される「政治犯罪」に当たるとは昭められない。
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