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高等裁判所 判例集

事件番号

 平成1(く)158

事件名

 中等少年院送致決定に対する抗告事件

裁判年月日

 平成元年9月18日

裁判所名・部

 東京高等裁判所  第五刑事部

結果

高裁判例集登載巻・号・頁

 第42巻3号151頁

原審裁判所名

原審事件番号

判示事項

 一 殺人未遂及び殺人の各行為について正当防衛が成立するとされた事例
二 中等少年院送致決定に「重大な事実の誤認」又は「決定に影響を及ぼす法令の違反」があるとされた事例

裁判要旨

 一 少年が鉄パイプ等を持った多数の暴走族から一方的に暴行を受け、追跡されながら逃走中、駐車場に通ずる出口のない道路に入り込み、追跡者らに追いつかれ、致命傷を生じかねない手ひどい暴行を受けることが確実に予期される状況となった場合に、意識の中に殺されてしまうということまでは浮かばなかったとしても、自己の身体を防衛しようと考え未必の殺意をもって所携のナイフで追跡者らのうち自己の両肩を掴んだ者一名、次いで、鉄パイプ様のもので自己の頭部付近を殴打した者一名の各左腹部を突き刺し、前者に傷害を負わせ、後者を死亡させた本件殺人未遂及び殺人の各行為(判文参照)は、過剰防衛でなく、正当防衛の範囲内にある。
二 少年を中等少年院に送致した原決定の認定した本件非行事実のうち優越して重要性のある殺人未遂及び殺人の事実につき事実の誤認又は法令の違反があって罪とならないと認められる以上、右事実の誤認又は法令の違反は、少年法三二条にいう「重大な事実の誤認」又は「決定に影響を及ぼす法令の違反」に当たる。

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