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高等裁判所 判例集

事件番号

 昭和59(う)263

事件名

 受託収賄、外国為替及び外国貿易管理法違反、贈賄、議員における証人の宣誓及び証言等に関する法律違反被告事件

裁判年月日

 昭和62年7月29日

裁判所名・部

 東京高等裁判所  第九刑事部

結果

高裁判例集登載巻・号・頁

 第40巻2号77頁

原審裁判所名

原審事件番号

判示事項

 一 刑訴法二二六条による証人尋問の請求を受けた裁判官と外国の裁判所に対し証人尋問の嘱託をする権限
二 憲法三八条一項違反とその主張適格
三 東京地方検察庁検事正の不起訴確約によつて外国の裁判所による嘱託証人尋問調書を取得したことが違法でないとかれた事例
四 供述者が原供述当時から国外にいる場合と刑訴法三二一条一項三号の供述不能の要件
五 内閣総理大臣について受託収賄罪が成立するとされた事例

裁判要旨

 一 刑訴法二二六条による証人尋問の請求を受けた裁判官は、国内の他の裁判所の裁判官に嘱託する場合と同一の要件のもとに外国の裁判所に対し証人尋問の嘱託をする権限を有する。
二 第三者は、証人に対し供述義務を課して取得された証言及びこれに由来して入手された証拠について、証人に対する自己負罪拒否の特権の侵害の有無にかかわらず、憲法三八条一項違反を理由として証拠としての許容性がないことを主張する適格を有しない。
三 外国の裁判所における嘱託証人尋問に際し、日本国において刑事訴追を受けるおそれがあることを理由に証言を拒否することが予想される外国人の証人に対し、東京地方検察庁検事正において証人が証言した事項につき刑事訴追を受けるおそれのある状態を消滅させる意図のもとに、刑訴法二四八条に基づき公訴を提起しない旨の不起訴確約を宣明したことにより嘱託証人尋問調書を取得したことは、当該諸事情(判文参照)のもとにおいては違法でない。
四 刑訴法三二一条一項三号にいう「供述者が国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができないとき」には、供述者が原供述当時から国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができない場合を含む。
五 閣議にかけて決定した方針(判文参照)に基づき運輸大臣を指揮監督する権限を有する内閣総理大臣が、航空機輸入業者等から、職務行為として民間航空企業に対し特定型式の航空機を選定購入するよう勧奨する行政指導をなしうる運輸大臣を介しあるいは自ら直接に右の趣旨の働きかけをするなどの協力方の依頼を受けて、これを承諾しその報酬として金員を受領したときは、受託収賄罪が成立する。

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