裁判例結果詳細
高等裁判所 判例集
- 事件番号
昭和52(う)2683
- 事件名
有価証券虚偽記入、同行使、詐欺、商法違反、公正証書原本不実記載、同行使被告事件
- 裁判年月日
昭和54年2月20日
- 裁判所名・部
東京高等裁判所 第一〇刑事部
- 結果
- 高裁判例集登載巻・号・頁
第32巻1号13頁
- 原審裁判所名
- 原審事件番号
- 判示事項
一 応預合罪の成立に必要とされる「通謀」の内容
二 仮装払込の一部のみについて応預合罪が成立するとされた事例
三 払込方法を異にする仮装払込の全部について応預合罪が成立するとされた事例
- 裁判要旨
一 商法四九一条後段の応預合罪の成立に必要とされる「通謀」とは、株金払込取扱機関の役職員と同法四八六条一項に掲げる者との間に、双方が株金の払込を仮装する行為であることを認識してその行為の実現に協力する意思を通じ合うことをいい、いわゆる「見せ金」による仮装払込の場合において、払込取扱機関の役職員が、その払込の仮装であることを認識していないときは、「通謀」は成立しない。
二 株式会社の新株発行に際し、株金払込取扱銀行の支店長が、仮装払込を意図する右会社取締役から、前回の増資の際の払込金を同銀行の別段預金口座から払い戻して今回の払込金の一部にあてたい旨の依頼を受けて承諾するなどの本件の事実関係(判文参照)のもとでは、同支店長は、右のような同一資金の二重利用にかかる払込については、その払込方法自体からこれが仮装であるとの認識を有し、「通謀」があるものと認められるけれども、その余の仮装払込についての「通謀」は認められず、前者のみについて商法四九一条後段の応預合罪が成立する。
三 株式会社の新株発行に際し、右会社取締役と払込人とが共謀のうえ仮装払込をした場合において、株金払込取扱銀行の支店長が、発行額の二分の一にのぼる金員を、それが右株金の払込にあてられるものであることを知りながら、右払込人に対し、土地購入代金又は運転資金という事実と異なる名目で、増資による変更登記完了までの間に限定して融資し、あわせて払込人が別途調達したその余の金員を含む払込金全部の払戻に必要な書類のすべてをあらかじめ提出させたうえ、株式払込金保管証明書を発行するなどの本件の事実関係(判文参照)のもとでは、同支店長は、右払込の全部につき、それが仮装であることの認識を有し、「通謀」があるものと認められ、その全額について商法四九一条後段の応預合罪が成立する。
- 全文