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高等裁判所 判例集

事件番号

 昭和49(う)910

事件名

 国家公務員法違反被告事件

裁判年月日

 昭和51年7月20日

裁判所名・部

 東京高等裁判所  第六刑事部

結果

高裁判例集登載巻・号・頁

 第29巻3号429頁

原審裁判所名

原審事件番号

判示事項

 一、 報道のための取材の自由と憲法二一条
二、 国家公務員法一一一条所定の同法一〇九条一二号、一〇〇条一項に掲げる行為の「そそのかし」の意義
三、 右「そそのかし」の罪の構成要件該当性阻却の可能性

裁判要旨

 一、 国家が報道機関の取材活動を無制限に制約することが許されないという意味での取材の自由は、憲法二一条により保護される自由の範疇に属する。
二、 国家公務員法一一一条所定の同法一〇九条一二号、一〇〇条一項に掲げる行為の「そそのかし」とは、同法一〇九条一二号、一〇〇条一項所定の秘密漏示行為を実行させる目的をもつて、公務員に対し、右行為を実行する決意を新たに生じさせてその実行に出る高度の蓋然性のある手段方法を伴い、または自らの影響力によりそのような蓋然性の高い状況になつているのを利用してなされるしょうよう行為をいうと解すべきである。
三、 報道機関が漏示のしょうようの対象となる秘密が擬似秘密(判文参照)
であると判断したことについて、確実な資料や根拠に照らし相当の理由があつたと客観的にも肯認しうる場合には、その漏示のしょうよう行為が国家公務員法一一一条所定の一〇九条一二号、一〇〇条一項に掲げる行為の「そそのかし」に当たるとしても、秘密の点につき確定的および未必的な認識を欠くとして、右の「そそのかし」の罪が成立しない場合がありうる。

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