裁判例結果詳細
高等裁判所 判例集
- 事件番号
昭和46(ネ)2402
- 事件名
貸金請求事件
- 裁判年月日
昭和50年10月28日
- 裁判所名・部
東京高等裁判所 第十四民事部
- 結果
- 高裁判例集登載巻・号・頁
第28巻4号320頁
- 原審裁判所名
- 原審事件番号
- 判示事項
一、 貸金が月給として支払われる労働者につき遅刻、早退、欠勤を理由に賃金を差し引かない黙示の定めが認められた事例
二、 使用者は労働条件のうち労使の利害が真向から対立する賃金額の計算方法を一方的に就業規則を変更することによつて賃金額を実質的に低下させるように変更することができるか
三、 遅刻、早退、欠勤がある場合月極め賃金が当然減縮するように改訂され就業規則には改訂前に雇用された労働者に対する賃金計算方法を変更する効力があるか
- 裁判要旨
一、 就業規則によつて月極めの月給が支払われ、右規則に遅刻、早退、欠勤を理由に賃金を差し引く旨の規定はなく、二十数年間遅刻、早退、欠勤につき賃金の差引きがされたことがないなど判示の事情のもとにおいては、使用者は、労働者の自己都合による遅刻、早退、欠勤を理由に提供のなかつた労務に対応する賃金部分を差し引かない定めであつたと認めるのが相当である。
二、 使用者は、労働者又はその所属する労働組合の同意がないのに就業規則を変更することによつて、労働条件のうちでも労使の利害が真向から対立する賃金額を実質的に低下させるよう賃金計算方法を労働者の不利益に変更することは許されないと解すべきである。
三、 労働者に対し自己都合による遅刻、早退、欠勤を理由に提供のなかつた労務に対応する賃金部分を差し引かない定めによつて月極め賃金を支払つていた使用者が就業規則であらたに遅刻、早退、欠勤により一定の割合で月極め賃金が当然減縮するように賃金計算方法を変更しても、右条項は、前記定めのもとに雇用され賃金を支払われていた労働者に対して、効力を有しないものと解すべきである。
- 全文