裁判例結果詳細
高等裁判所 判例集
- 事件番号
昭和50(行タ)5
- 事件名
緊急停止命令申立事件
- 裁判年月日
昭和50年4月30日
- 裁判所名・部
東京高等裁判所 第三特別部
- 結果
- 高裁判例集登載巻・号・頁
第28巻2号174頁
- 原審裁判所名
- 原審事件番号
- 判示事項
一、 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律に基づく審判開始決定前の緊急停止命令申立の適否
二、 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律にいう「不公正な取引方法」を構成する不当廉価の意義
三、 日刊新聞紙を通常の販売原価を下回る価格で販売する行為が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律一九条に違反する疑いがあるとして緊急停止命令が発せられた事例
- 裁判要旨
一、 公正取引委員会は、事案の審査に着手した以上、審判開始決定の前であつても、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律に基づく緊急停止命令の申立をすることができる。
二、 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律にいう「不公正な取引方法」を構成するいわゆる不当廉価とは、単に市場価格を下回る価格をいうのではなく、経済上通常計上すべき費目によつて算定されるべき原価を下回る価格をいうものと解すべきである。
三、 特定の販売地域で新しく日刊普通新聞を発行販売する事業者が、通常の販売原価が一か月一部当り八一二円となるのに他企業の特殊な援助を内容とする業務提携により算定した価格五〇〇円でこれを販売し、これにより既存の新聞発行販売事業者に対し競争上きわめて有利な地位に立ち、廉価のため他紙の読者中その新聞に購読を切り替える者が続出し、これがため新聞販売事業の公正な競争秩序が侵害され回復し難い状況におちいるおそれがあるなど判示のような事情がある場合には、右販売行為は、不当に低い対価をもつて物資を供給し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律一九条に違反する疑いがあり、これを緊急に停止する必要があるとして、右販売行為の緊急停止を命ずるのが相当である。