裁判例結果詳細
高等裁判所 判例集
- 事件番号
昭和31(う)3230
- 事件名
窃盗住居侵入強盗殺人被告事件
- 裁判年月日
昭和32年12月26日
- 裁判所名・部
東京高等裁判所 第一〇刑事部
- 結果
棄却
- 高裁判例集登載巻・号・頁
第10巻12号826頁
- 原審裁判所名
- 原審事件番号
- 判示事項
一、 自白の任意性(刑訴第三一九条弟一項強制・拷問・脅迫による自白)
二、 最高裁判所が自白の真実性が疑わしいとして破棄差戻した場合に右
判断は下級裁判所を拘束するものと認めた事例
- 裁判要旨
一、 刑訴第三一九条第一項の規定は、憲法第三八条第二項の規定を受けたものであつて、自白が証拠能力を有するためにはその任意性を要件とする趣旨であり、右規定にいわゆる強制、拷問、脅迫(不当長期拘束後の自白については本件と直接関係がないから除く)は任意性のない場合の典型的事例を例示的に列挙したものであり、強制、拷問、脅迫による自白とは、これらの強制、拷問または脅迫と自白との間に相当因果関係の存在を必要とする旨を示したものと解され、その相当因果関係のある自白とは、右の強制、拷問または脅迫等自白の任意性を失わせるような不法不当な圧迫が現に加えられつつあるか、または過去においてこれらの圧迫が加えられたことにより、将来も再びそのような圧迫が繰り返されるおそれのある状態においてこれを原因としてなされた自白を指称するものと解するを相当とする。
二、 最高裁判所が被告人の自白以外には被告人を本件の犯人であると確定できるような物的その他の証拠がないと判断した事件につき、右自白の真実性が疑わしいとして破棄差戻した場合、下級裁判所は、右差戻後における審理の結果、最高裁判所が右の判断を示した当時において証拠として存在した資料の外に、それだけによつて、または、それと右差戻当時存在した資料とを綜合して右自白の真実性を認め得るような新たな証拠を発見した場合でなければ、最高裁判所の右の判断に牴触する判断をすることは許されない。
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