裁判例結果詳細
高等裁判所 判例集
- 事件番号
昭和36(ネ)349
- 事件名
建物収去等請求事件
- 裁判年月日
昭和39年8月5日
- 裁判所名・部
大阪高等裁判所 第九民事部
- 結果
- 高裁判例集登載巻・号・頁
第17巻5号343頁
- 原審裁判所名
- 原審事件番号
- 判示事項
賃借人が個人営業を会社組織にした後その個人が会社から排除された場合における賃借物占有使用の権限の有無
- 裁判要旨
従来の個人経営を会社組織に改め、賃借物上の建物を、その賃借権とともに会社に現物出資したような場合、その経営の実態が、個人と会社とでは格別異なるところなく、土地の使用状況にさしたる変化を来たさないため、右賃借権の譲渡又は賃借物の転貸が賃貸人に対する関係で背信行為ではないと評価され、賃貸人が賃貸借契約を民法六一二条で解除できないときは、賃借人との関係で賃借権の譲渡又は賃借物の転貸を受けた会社は、賃借人の賃借権を正当に援用できる地位にあり、賃貸人はこれを受忍すべき法律関係にある。しかし、それは賃借権の譲渡又は賃借物の転貸を受けた会社の経営が、個人のそれと異なることがない場合にだけ妥当する。もし、会社の実態が、たとえば組織がえなどのため、賃借人である個人が会社から排除され全く別異になつたときは、賃借権の譲渡又は賃借物の転貸を受けた会社は、もはや賃借人の賃借権を正当に援用できない関係に立ち至り、そのとき以後賃借物の不法占拠着であると解するのが相当である。
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