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高等裁判所 判例集

事件番号

 昭和28(ラ)115

事件名

 仮処分申請却下決定に対する抗告事件

裁判年月日

 昭和29年2月5日

裁判所名・部

 大阪高等裁判所  第三民事部

結果

高裁判例集登載巻・号・頁

 第7巻2号153頁

原審裁判所名

原審事件番号

判示事項

 一、 占有代理人に対する占有回収の訴と出訴期間
二、 侵奪者のために善意で代理占有を始めた者が悪意に転じた後なお直接占有を継続中に侵奪者の悪意の特定承継人から占有の譲渡を受けた場合悪意の特定承継人ということができるか
三、 不作為を命ずる仮処分命令に承継執行文の付与は許されるか
四、 仮処分命令に解放金額を定めた一事例

裁判要旨

 一、 自己のために占有すると同時に不法に占有を侵奪した者のために代理占有をなす者に対して、占有回収の訴を提起するには、必ずしも侵奪の時より一年内にこれをなすことを要するものではなく、侵奪者に対する適法な占有回収の訴が係属中であるか、または被侵奪者がこれに勝訴した後であれば、占有代理人に対する占有回収の訴は侵奪後一年を経過した後でもこれを提起することができる。
二、 占有者甲から不法に占有を奪つた侵奪者乙のために代理占有をなすと同時に自己のために占有をした直接占有者丙が、占有の初は右侵奪の事実を知らず中途でこれを知り、その知つた後に、侵奪者乙から占有の譲渡(指図による引渡)を受けた悪意の譲受人丁のために代理占有中右丁から占有の譲渡(簡易の引渡)を受けるに至つた場合には、善意で始まつた丙の直接占有が当初から間断なく継続しているとしても、丁から占有の譲渡を受けた時以後丙は侵奪物についての悪意の特定承継人というべきである。
三、 単純な不作為を命じた仮処命令であつても、仮処分債務者の特定承継人と仮処分債権者との関係においてなお仮処分の必要の存する限り承継執行文は付与することができる。
四、 仮処分債権者の有する権利が係争土地の占有権と賃借権であり、右権利の実行が不能または困難になつたとしても、金銭的補償を得ることにより終局の目的を達し得べきものである一方、仮処分債務者が係争土地に大ビルデイングの建築を始め、既に右工事は相当進行し、仮処分命令によつて工事の続行が不可能となり、これがため甚大な損害を蒙るおそれが多分に存するときは、仮処分命令の執行を免れることを得させるために供託すべき金額を定めるのが相当である。

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