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高等裁判所 判例集

事件番号

 昭和40(う)91

事件名

 労働基準法違反,業務上過失致死傷被告事件

裁判年月日

 昭和43年10月28日

裁判所名・部

 広島高等裁判所  松江支部

結果

 破棄自判

高裁判例集登載巻・号・頁

 第21巻5号422頁

原審裁判所名

原審事件番号

判示事項

 1 砂山の裾を掘り崩して砂を採取する工事中砂が崩壊して人夫に死傷を与えた場合に業務上の過失責任ありとした事例
2 砂山崩落の危険性の認識があるとして労働安全衛生規則第116条第1号,第117条女子年少者労働基準規則第8条第23 号にそれぞれ該当するとした事例

裁判要旨

 1 判示のような高さ約37米,幅約60米,斜面の角度約40度,斜面の長さ最も長い処で約60米,両端で約35米の砂山
の裾を,幅約60米に亘り多数の人夫がスコツプで掘り崩し,上部からの自然崩壊を利用して砂を採取する工事において,工
事施行の責任者は,適時砂山の上部を切り落して安全勾配を維持するようにし,また適当な個所に砂留の設備をする等して砂
の崩壊を防止し,あるいは砂採取個所とトロツコ線,トロツコとトロツコとの間にできるだけ安全な間隔を保ち,万一上部か
ら多量の砂が崩壊することがあつても人夫等が敏速に避難できるよう配慮し,砂の崩壊による事故発生の危険を未然に防止す
べき注意義務があり,これを怠つて工事施行中,砂の大崩壊を生じ,人夫等に埋没等による致死傷の結果を発生せしめるに至
つたときは,業務上の過失責任を免れない。
2 (イ)右のような工事現場において,判示のような工法と規模で砂の採取工事を行なう場合,前記安全勾配維持のための人為的
な措置がとられていない以上,右工事現場は,労働安全衛生規則第116条第1号の「崩壊の危険がある地盤の下」,同第1
17条の「土石の崩壊又は落下の危険がある掘さく個所」,および女子年少者労働基準規則第8条第23号の「土砂が崩壊す
るおそれのある場所」にそれぞれ該当する。
  (ロ)右工事現場において,トロツコ線が埋まる程度の砂の崩壊はしばしば起きていること,過去にも逃げ遅れた人夫の傷害事
故が発生していること,人夫等に対し法尻とトロツコ線との間隔トロツコとトロツコの間隔等の点につき一応の指示,注意が
なされていたこと等,判示のような事情のもとでは,工事施行の責任者は,砂崩落の危険性,ひいて右工事現場が前記各規則
の条項に該当することの認識を有していたと認めるのが相当である。

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