裁判例結果詳細
高等裁判所 判例集
- 事件番号
昭和32(う)977
- 事件名
所得税法違反被告事件
- 裁判年月日
昭和34年3月31日
- 裁判所名・部
福岡高等裁判所 第二刑事部
- 結果
- 高裁判例集登載巻・号・頁
第12巻4号337頁
- 原審裁判所名
- 原審事件番号
- 判示事項
一、 所得税法第三条の二は条理としてのいわゆる実質課税の原則に関する確認規定か
二、 条理としてのいわゆる実質課税の原則による所得の判定と罪刑法定主義との関係
三、 所得税法第六九条第一項の罪は身分犯か
四、 企業組合の法律的性格
五、 所得税法第六九条第一項の不正行為の一事例
六、 所得税法第六九条第一項の罪の成立と税務官吏の錯誤の要否
- 裁判要旨
一、 所得税法第三条の二は、税法上条理として是認されているいわゆる実質課税の原則に関する確認規定と解すべきである。
二、 所得税法第六九条第一項前段所定の所得額を条理としてのいわゆる実質課税の原則に従い判定して同条所定の罪を認めることは、罪刑法定主義に反しない。
三、 所得税法第六九条第一項前段の罪において、犯人が所得税納入義務者という特殊の地位にあることは、刑法第六五条第一項の身分にあたる。
四、 企業組合は零細事業者または勤労者が資本と労力を組合に没入し、ことに事業者はその営業のすべてを組合に提供して事業主体たる地位を喪失し、組合の従業員として給与を受け、組合が唯一の事業主体である営利法人と解するのが相当である。
五、 実体を備えない仮装の企業組合の組合員が実質的には個人事業を営みながら、外見上恰も営業用資産を組合に譲渡し、組合の従業員として給与を受けているが如く偽装して、期限内に確定申告書を提出しないで所得税を逋脱したときは、所得税法第六九条第一項前段所定の不正行為により所得税を免れた罪を構成する。
六、 所得税法第六九条第一項前段の罪が成立するには、不正の行為によつて税務官吏が錯誤に陥ることを要するものでない。
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