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高等裁判所 判例集

事件番号

 昭和29(う)125

事件名

 脅迫被告事件

裁判年月日

 昭和29年3月31日

裁判所名・部

 福岡高等裁判所  第一刑事部

結果

 棄却

高裁判例集登載巻・号・頁

 第7巻2号217頁

原審裁判所名

原審事件番号

判示事項

 一、 刑法第二二二条第一項の脅迫罪における害悪の告知
二、 部落民共同の絶交が社会通念上正当視されない一事例

裁判要旨

 一、 全部落民集会の公開の席上で共同絶交の申合せをなし、従つて部落居住者一般に右申合せを周知させる状態に置き、なお現に被絶交者が右申合せの内容を聞知したときは、刑法第二二二条第一項の脅迫罪を構成する害悪の告知がなされたことになる。
二、 部落民共同の絶交が、被絶交者四名話合の上その一人が村当局に対し該部落のため不利益な言辞を洩らしたことおよび従前も右四名が同部落の共同事業に非協力的であつたことをその理由とする場合において、被絶交者等が右の様な話合をした何等の事蹟も見出し難く、かつその一人が洩らしたとされているいわゆる不利益な言辞の内容も同部落に対する供出米補正割当についての意見を述べているに止まりそれ自身何等非道義的なものを包含していないのみならず、右の様な不利益な言辞を洩らした事実についても右共同絶交の主唱者がその旨吹聴していることの外何等之を認めるに足る根拠がなく、また被絶交者四名の内一人は同部落の共同事業に全面的に協力しその余の三名の非協力についてもそれぞれ斟酌すべき事情が存在するときは、社会通念上右共同事業を正当視すべき被絶交者側の非行その他の事由は存在しないものというべく、従つて斯様な共同紹交は刑法第二二二条第一項の脅迫罪を構成する違法なものにあたる。

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