昭和29(う)667

 放火被告事件

 昭和30年4月12日

 仙台高等裁判所 　第二刑事部

 破棄自判

 第8巻3号301頁

 重過失失火罪の成立する一事例

 他人所有の住家に近接し、かつ厩に接続した便所内の、蓋をした肥溜の上に炭の空俵約二〇俵を積み重ね、その下に密柑箱位の木箱一個を、一部その炭俵の下から外に出して置いてある所で、その炭俵からむしりとつた長さ約六寸の萱片一握りに点火し、これを右木箱の炭俵から外に出ている部分に置いて、用便のための照明に使用しながら、不注意のため、その火が右炭俵から便所その他の建物に延焼すべきことを認識せず、これを防止すべき何等の措置をとらなかつたため、その火が延焼して右便所、厩並びに住家を焼燬したときは、刑法第一一七条の二の重過失失火罪を構成する。

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