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高等裁判所 判例集

事件番号

 昭和49(う)219

事件名

 業務上過失傷害被告事件

裁判年月日

 昭和51年3月18日

裁判所名・部

 札幌高等裁判所  第三部

結果

高裁判例集登載巻・号・頁

 第29巻1号78頁

原審裁判所名

原審事件番号

判示事項

 一、 過失犯における結果発生の予見可能性の意味
二、 介助看護婦による電気手術器のケーブル誤接続につき執刀医として手術開始直前に接続の正否を点検しなかつたことが業務上過失傷害罪における注意義務違反にあたらないとされた事例

裁判要旨

 一、 過失犯において結果発生の予見が可能であるとは、特定の構成要件的結果及び結果発生に至る因果関係の基本的部分の予見が可能であることを意味し、内容の特定しない一般的・抽象的な危倶感ないし不安感を抱く程度では足りないが、結果及び因果の過程の詳細な予見が可能であることまでは要しない。
二、 執刀医にとつて、電気手術器のケーブルの誤接続のありうることにつき認識を欠いたことなどのため、誤接続に起因する傷害事故発生の予見可能性が必ずしも高度ではなく、また手術開始直前に介助看護婦を信頼して接続の正否を点検しなかつたことが当時の状況のもとで無理からぬものであつた場合(判文参照)、右点検を行なわなかつたことは、いまだ執刀医として通常用いるべき注意義務に違反するものではなく、業務上過失傷害罪における過失にあたらない。

全文